夢追い旅

離婚

 久しぶりに我が家に戻ってみると、人の気配のないテーブルに白い封筒が乗っていた。周平は背広も脱がずに、封筒を開く。離婚届に映子の直筆と印鑑が押してあった。手紙らしいものはない。何も感慨がわいてこない。そのままポケットに押し込むと外に出た。
 なぜか当然の結果なような気がした。
 久しぶりに銀座の映子のママに携帯を入れた。
「今なら時間がとれるからおいで」
とそれだけで切れた。
 実に結婚式を挙げた時以来の訪問である。
 銀座のクラブに着くと、専用の応接室に案内された。
「ご無沙汰ねえ」
「すいません」
 どうもこのママは苦手だ。 
「映子はここにはいないわ」
 煙草をゆっくりふかす。
「離婚のことは聞いた。詫びないよ。お互い様だからね。あの子、子供できたのよ。もちろんあなたの子供じゃない」
 今年で50歳になったのかとふと考える。今の会長と別れるときの不思議な涙を思い出した。
「私もこの際鈴木とも別れることにした」
「もう話し合われた?」
「電話でね。鈴木はあの秘書課の女とできているからね。それにあの人のツキはなくなったよ」
「会長の件ですね?」
「私は会長の影の女でいいの」
「一ついいですか?どうして会長と取締役がしっくりいかなくなったのですか?」
「あの人は野望が強すぎる。会長は昔はその野望に魅力を感じてたわ。でも今は危険なのよ」
「次は名声ですか?」
「あなたも考えてみることね」



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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

柳沢戻る

 最近叔母の夢を見る。
 思い出したように叔母のお気に入りの写真を取り出す。まだ30過ぎの頃の若い時の写真だ。でも周平の記憶にある叔母はこの若さのままで止まっている。
「奥さん?」
 団長が覗き込む。
 昨夜は団長も抱いた。カオルは3回だ。
「いや」
 起き上がって、用意してくれたスパゲッティに箸をつける。
「周平に似てるね?」
「まさか、そんなのを言われたのは初めてだ。唯一の身内の叔母だ」
「へえ、でも目元なんかそっくりよ」
 外からケイ君の声がする。
「入るぜ」
と言いながらも半分くらい覗いている。
「ケイ君も食べる?」
「何しろ兄弟だからな」
にやにやしている。
「柳沢昨日戻ってきたぜ。ママの兄貴も一緒だ」
「あのチンピラは?」
「行方不明のまま」
「信州に行ってたらしい」
 轟の情報を伝える。
 周平はさっそく轟に携帯を入れる。
「今会長の自宅を張っていたら、柳沢が入っていった」
「段取りがいいな」
「いや、元警察の力だよ。高速のカメラでママの兄貴の車を見つけたんだ。詳しことはまたする」
 それで携帯が切れた。
「ものは相談だが、その兄貴の車を調べられる?」
「かなり汚れているから部下に洗わせるだろうね。2万も握らせれば」
「じゃあナビを見てくれ」











テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

頭取の封筒

 加瀬の談合の後始末をしていると、相談役から携帯が入った。赤坂でタクシーで拾って貰って、M銀行の本社にに向かう。
「誰に会うのですか?」
「頭取だよ」
 長い廊下を通されて、広い応接に案内される。
「M銀行は私の親父の代までM商事のメインバンクだったんだよ。それが今の会長が社長になってからS銀行と並行メインになった」
 相談役は昔を懐かしむように話す。
「今の頭取はしばらくM商事に出向できていた時期がある。遠い親戚筋にあたるらしい」
 そこまで話していると、ドアが開いて恰幅の良い年配の紳士が現れた。
 相談役が立ち上がって挨拶をする。周平も同じ姿勢を取る。
「どうだ。本社に戻った感想は?」
「いえ、まだ馴染めませんね。彼に会社の歩き方を教わっているところです」
「彼が鈴木君の弟子ですか」
 ここにも舅が絡んでいる。
「赤坂はあのベンチャーに移行が始まった?」
「300億からですが、まだ雲行きが見えません。君ところの社長は相変わらず勘違いをしとおるのか」
 社長はM銀行出身である。
「自分が繋ぎと思っていないからたちが悪い」
 周平はじっと質問を我慢している。
「赤坂は確かに魅力がある。こちらも手を出したいところだが、S銀行がすでにがっちり固めている。それに爆弾だ。火傷では済まない。それよりその爆弾を操るほうが得策だ。でも、相談役が返り咲くのは難がありすぎる」
「了解してます。できればもう一つ 繋ぎを挟んでもらって息子に」
「そのあたりが相場だな」
 相談役の息子とは?
「今後は彼に動いてもらいますので」
「うん、分かった」
 そう言うと、内ポケットから封筒を出して相談役に渡す。









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追跡

 轟が久しぶりにホワイトドームで飲んでいたら連絡が入った。30分ほどでホワイトドームに着くからと切れた。どうもここも彼なりに調べているようだ。
 店にはカオルがいるだけで、常連の目玉さんがいるきりである。 
「いや、信州はもう雪だぜ」
「もう運転ができるのか?」
「飯の種だから贅沢は言ってられないさ」
と言いながら、カオルに焼酎の熱燗を頼んでいる。
「まず報告だ。赤坂の地上げ現場は調べた。車はあの残骸に間違いないとのことさ。現場の茶碗にあのチンピラの指紋があった。でもどこかに連れ去られた」
「それで信州に?」
「ああ、国崎さんから会長の別荘があると言われて走ったわけ」
 カオルがチーズを皿に入れてくる。どうも轟の好物を知っているようだ。
「確かに2日前までこの別荘に男が3人いたと管理人が言う。人相の悪い男と言っていたから、間違いないだろう。別荘の鍵は持っていたということだ。それに1人はスーツにコート姿だったらしい」
「それが柳沢部長だ」
「もちろん写真を見せた。顔を覚えていたよ。また会社勤めだってね」
「国崎さんからか?」
「ああ、重要人物だからね。加瀬が逮捕されたようだね?」
「それも?」
「これはそちらの舅さんだろうね。余計なことをすると愚痴を言ってたからな国崎さん」
 どうもやはり舅は相談役とまだ組んでいるようだ。どういう結末を求めているのだろうか。
「これは顧問弁護士から聞いたのだが、警察で加瀬は赤坂のことを聞かれてようだ」
「それはいい情報だ。これもこちらから国崎さんに報告するよ」
 轟は手帳に書き込んでいる。
「これは見返りの情報だ。先日国崎さんが会長と車の中で2人きりで会っていたと言っている。話し中は車から運転手は降ろされて風邪を引いたと嘆いていたよ」
 何か取り決めをしたのだろうか。






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加瀬の逮捕

 出社して3日後、いきなり加瀬課長代理が建設資材の談合で逮捕された。これは周平の絡んでいない談合だ。この課で扱っている中では3流にあたるレベルである。周平は相談役から調査の依頼を受けた。どうも1通の投書があったようだ。かなりの談合の資料を警察に押えられているようだ。
「これは直属の上司の仕事ではないのですか?」
 相談役に尋ねたが、兼務の柳沢部長が長期休暇扱いになっているという。それでお鉢が前課長の周平に回ってきたようだ。さっそく、顧問弁護士のところに出かける。
 この顧問弁護士とは何度もやり取りをしたことがある。
「どこまで確認できていますか?」
「長期休暇は取り下げられたようですね」
白髪の髭を蓄えた弁護士がテーブルに案内してくれる。
「かなり詳しい内部資料を警察は押さえているようですね。でも、このレベルの談合では会社上部まで及ぶことはありませんね。どちらか言うと加瀬さんの個人的な問題のほうが多いです。結構下請けに飲み食いのツケを回していた」
「注意はしていたのですが」
「それより接見の時に赤坂プロジェクトの質問を受けたといっています」
「別件?」
「分かりませんね。彼は赤坂には詳しいのですか?」
「いえ、まったくノンタッチです」
「先生に依頼したのは?」
「相談役です。もともと亡くなられた監査役と同じ大学で、御社の顧問に推薦されまして、今は若い顧問弁護士に仕事が集中しているようですね」
「会長の」
「ということで、赤坂のことは私は全くわかりません。鈴木取締役からもあなたから聞くようにと伺っています」
 どうやらこの逮捕は舅が絡んでいるらしい。
「赤坂の件では会長と社長と相談役が三つ巴になっていますが、まだ詳しいことはよくわからないのです。直接担当しているのは柳沢部長です」
「現在長期休暇中ですね?」








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プロフィール

夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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