夢追い旅

臭いものに蓋をする

 慌ただしい日が続く。轟が小林と許のクラブでの盗聴に成功したと報告があった。京都駅裏の更なる買い増しの融資の依頼で、小林がバックを1億を要求している。小林も代表権を外されたのでこの辺りで大きく稼いでと考えているようだ。
 ケイ君の携帯に入れると、まだ大阪にいるようだったので、もう一度京都によって帰ってもらうことにした。もう一度地元の新聞記者に会って、次の購入地と状況を調べてもらう。その後すぐにファイナンスの人事部長に大阪支店の稟議状況を調べてもらう依頼をした。
 周平は今日は直行で私設秘書の事務所を訪ねている。『噂の真相』の次号にこの京都駅裏地上げのシリーズの原稿を持ち込んでいる。
「いや何とか雑誌社のような感じになってきましたね」 
 最近リホームを入れて打ち合わせテーブルに本棚が並んでいる。それに若い女性事務員を入れている。
「雑誌が案外いい商売になるんだよ。それに法人会員が思ったより増えている」
「それは総理の秘書の名刺が効いているんですよ」
「今のうちに老後の準備をしとかなきゃな」
 彼は彼なりに今の総理が長くないことを感じているようだ。
「報告は読ませてもらいましたが、未公開株の現場での感触はどうなんですか?」
 出してもらったコーヒーを口に運びながら尋ねる。
「いやな燻りがあるな。これは総理にも内緒にしているのだが、リスト通りに未公開株が配られていない気がするんだ」
「それは?」
「今回は総理自身が第1秘書を使ってやったのでつんぼ桟敷なんだ。敢えて私を外したという気がしている」
「そっれはまたどうして?二人三脚でここまで来られたんでしょう?」
「だから臭いものに蓋をする。私設秘書の宿命かな。だからあんたとのこの仕事を大切にしている」
 未公開株がリスト通り配られていないとメモ書きする。
「この原稿を次にシリーズとして乗せてください。今回からペンネームを薫に変えてください」









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ツキ

 夜に轟から携帯が入る。ちょうどNビルから出る時だ。
「小林を着けて来たら、銀座のクラブで例の許と会っている。資金は頼みますよ」
「領収書もな」
 笑いながら携帯を切ったところに旗手社長が立っている。後ろに普段着に着替えたミーが遅れて出てくる。
「たまに3人で飲まないかね?」
「邪魔じゃないですか?」
「そう疑うなよ」
と笑いながら言われて、ミーの馴染のスナックにぶらぶら歩いていく。
「君はビールの小瓶らしいな」
 どうもいろいろとミーから聞いているようだ。それにこの店にも時々二人で来ているようで、マスターは黙ってミーと同じブランディを注いでいる。
「小林は動き出したか?」
「はい。今許と会っています」
「君はミーのことで気を使っていると誤解しているようだが、ミーだけでここまで我慢しないさ」
 ミーがふくれっ面になっている。
「実はな、この会社がここまで伸びたきっかけは本業の人材派遣の許可申請からだ。今の代議士と知り合う前にな、別の代議士のつなぎ役が小林だった。詳しいことは聞いていないが、かなり危ない橋を小林は渡っている。それで彼にこの会社が大きくなったらかなりのポジションを任せると約束した」
 ミーが初めて聞いたという顔をしている。
「小林は欲の塊だ。どうも黒崎にうまく利用されたようだな。でももう限界だ」
「でもここまで踏み込まれたら」
「そうだ。打てる手は打つが後はツキだけだ」
「Yテレビの社長は手ごわいですよ」
「彼らも自分らの権益を新参者に取られたくない。ここは想定内の大きな山だ。でもこの山を越えなけりゃ新しい時代は来ない。今までのベンチャーはすべてここで食われてしまった」







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過去の男

 ケイ君に連絡を入れるが応答がない。
 ミーから携帯に翌朝小林が代表取締役から平の副社長の辞令が出ると昨夜あった。どうも旗手社長とホテルにいる気配があった。きっと同じベットに旗手社長がいる声がする。妙に嫉妬している自分が不思議だ。ケイ君が使えないので轟に小林を張ってもらうように頼んだ。辞令の時は本社に呼ぶようだから人事部長にビルを出る時に連絡を入れてもらうのを頼んだ。
 周平は朝一番に黒崎の事務所の近くの喫茶店で舅と会う。これは舅から会談の申し入れがあったのだ。
「してやられたなあ」
 周平の顔を見るなりの一言だ。すでに前に来ていたのか、灰皿に煙草の吸殻が山となっている。
「『噂の真相』はそちらの記事だな。今日から黒崎が警察に呼ばれている。それに轟まで抱き込んで、ねぐらの偽装をさせた」
「ねぐらにも絡んでいたのですか?」
「ああ。あの頃は黒崎と組んでいたからな。でもそちらがここまで育つとは思っても見なかったよ。俺と手を結ばないか?一時は義理の親子だったしな」
「何をしようとしているんですか?」
「もう一度M商事の役員に返り咲く。黒崎は信用してない」
「今度はYテレビの社長ですか?」
「そこまでばれているか。それなら説明はいらんな。答えは?」
 周平は煙草の煙をしばらく見つめている。
「マドンナの強姦写真が雑誌に載りましたよ。ご存知ですか?」
 その言葉に舅は驚きの表情が隠せない。でも精一杯、
「過去の女だ」
 と言い切った。
「私にとってもあなたは過去の男です」
「お前なんてすぐに首にできるルートがある」
 どうも小林のことを言っているようだが、副社長の件は知らないようだ。

















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権力の座

 ケイ君から連絡があった。ショウちゃんから情報を貰って例の動物公園の映画館に出入りしているお釜と会ったというのである。その話の行きがかり上別の施設に出かけているというのだ。詳しいことは戻ってからゆっくり話すということだ。だがゆっくり話すのはまずは団長のような気がする。
 今日は久しぶりにM商事の社長に呼ばれている。
「どうですか座り心地は?」
 社長室に入って周平は笑いかける。
「引退すべきだったかな。今は反省してるよ。それに君を手放したことが不味かったね」
 しばらくの間に神経質な顔になっている。あの極楽とんぼはどこへ行ったのだろう。
「前回のご入金はありがとうございました」
 気前よく100万を振り込んできていた。
「引き続いてお願いしたいんだよ。調査部をなくしたのも失敗だったな」
「今回は?」
「会長の件だ。いつの間にかYテレビが相当の株数を買い占めたようだ」
「何を要求してきました?」
「代表権だよ。それとYテレビからの取締役の受け入れだ」
「M銀行の頭取とは話を?」
「相手が悪いと言って引いてしまったよ。それに相談役は会長職を望むばかりで力にならんしなあ」
 愚痴が際限なく出てくる。
「どうしたいのですか?」
「Yテレビは仕方ないとして、会長の代表権は無理だ。ようやく赤坂の整理が済んだところでまた会長派の復活では元も子もない。ようやく派閥争いがなくなったところだ」
「Yテレビと会長はつるんでいますね。そこに黒崎と鈴木が挟まっています。会長の弱点は柳沢です。そこを突くしかないですね」
 権力の座に着くと人間は変わるのだと顧問いや社長を見つめる。

















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新しいライバル

 翌朝一番に旗手社長の本社に呼ばれた。社長の応接室に通された。また新しく作り変えられたようで、待合室に受付嬢が座っていて、3つある部屋に呼ばれるようになっている。それぞれが完全防音でどの部屋のも反対側にドアがある。そこから旗手社長が入ってくるようだ。その裏に社長室があるようだ。
 すでに3人の男が座っている。こういう時は迂闊に名刺交換できない。旗手社長が周平をどんな立場で紹介するかによるのだ。到着が知らされたのか、旗手社長がワイシャツ姿で入ってくる。
「この顔を覚えておいてくれ。Nビルの秘書室長だ。こちらは本社の専務で、こちらは総務部長。時間がないから単刀直入にする。例の未公開株の調査書は彼が書いている」
「昨日Y新聞の記者が訪ねてきたのです。未公開株のリストが手にはいいたと一部見せたのです」
 40過ぎの総務部長が名刺を見せる。正式なY新聞の名刺だそうだ。
「コピーを取らせてもらって調べないと、担当部署が違うので判断がつきませんと言いましたが、なかなか手ごわい記者で責任者に出てもらわないとコピーは渡せませんなと言い張るのです」
 田辺一郎という文字を見てひらめいた。
「杖をしてました?」
「はい。交通事故に合ったと言ってましたね」
 舅がYテレビの社長の了解を取り付けて名刺を作ってもらってきている。
「それで僕が出た。これをすでに一部だけコピーを作ってきたようだ」
 これも若い専務が答える。この部分は最初に代議士に渡す前のリストだ。旗手社長の目が周平を捕らえている。
「ファイナンスの小林社長から渡ったものです。今黒崎さんのところの記者をその記者鈴木がしています。小林社長は元々Kジャーナルにしばらくいたのです。M商事の会長もまた彼らとYテレビの社長に繋がっています」
「やはりな」
 それだけ言うと旗手社長はもう立ち上がる。どうも彼らに聞かせる必要もあったようだ。
「予定を早めますか?」
 専務が言う。
「例の銀行の支店長をファイナンスに相談役で入社させるのだ。ただ、小林も今回は牙をむくか分からん。彼にもいろいろさせて来たからな」
 最後は独り言のようだ。ミーの知らない出来事があったようだ。
「今後動きがあったら秘書室長と話してくれ。これからはYテレビの社長がライバルになるようだな」

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プロフィール

夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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