夢追い旅
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ガセネタ

 Kジャーナルの記者名で怪文書を作り、加瀬を個室に呼んで見せた。
「Kジャーナルといえば鈴木取締役と親しい事件屋でしたね?」
「ああ、まだ原稿段階だが、好意的に見せてもらった」
「見せてもらってもいいですか?」
「ああ、調査を任せようと思っているから」
 加瀬は食い入るように見ている。
「監査役が次回持ち込む予定の原稿だった。それがなぜ同業者に流れたのは分からないが」
「これでは会長が赤坂資金の中抜きをしていたということですね?」
「調査してみないとわからないが。だが、監査役がそう言い切るのであれば、ちゃんとした証拠を握っていたと考えられる」
 目で、鈴木取締役はと聞いている。
「これは会長には見せられないね」
「そうでしょうね」
「ここには監査役の事件にも会長派が絡んでいると警察が内定を始めたとあるがそこまでは」
 加瀬をここで使わせてもらう。彼は相談役を社長に合わせている。きっとこの内容を社長派に伝えるだろう。
 周平は現物をポケットにしまい込むと、惜しそうに見る加瀬に、
「Kジャーナル記者の在籍だけは確認してくれ」
 と部屋を出た。
 とにかく、柳沢をあぶりだすしかない。お手付きをするのは彼しかいない。ただ、舅の取締役も女が絡むとガードが甘くなる。
 屋上に上がると、マキの携帯に連絡を入れた。敢えて留守電に吹き込んだ。
「加瀬から情報が入る。これはこの前のお誘いの気持ちだけの礼です」
と。








 
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

魚の小骨

 どうもまた薬を飲まされたようだ。カオルには注意していたが、薬を入れられた素振りは思い出せない。ただ今日は、一人でホワイトドームの2階で眠っていたようだ。
「団長は?」
 部屋に入ってきたケイ君に尋ねる。
「先ほど、カオルと病院に出かけたよ。もうすぐに目が覚めるからって携帯があった」
「また、薬を飲まされたみたいだ」
「今日のは団長だよ。俺は団長に睨まれて、独り寝なんだぜ。オムライスがフライパンに出来てるって」
 そう言いながら、ケイ君が器用に温めてくれる。
「あのサングラスの男について前回の料金の範囲で教えてやるよ」
 二人分を皿に分けると、ポケットからサングラスの男の写真を狭いテーブルに置く。
「貿易のような仕事をしている。事務所はよく変わっている。今は代官山にある。昨日のような客をひと月に一回連れてくる」
「売春が商売?」
「いや、取引先が多いようだ。昨日も、外人が多い。団長とはかなり古い」
「恋人?」
「寝たところは見たことはない。それだけだ」
 ケイ君の食べるのは早い。
「探偵のような仕事もするんだってね?」
「ああ何でもやるよ。サングラスの男を調べる?」 
「いや」
 しばらく考え込んだ。出来るだけ事情の分からない、信用できる男がほしい。
 周平はポケットから柳沢部長の写真を出して見せた。彼の住所もそこに書いた。今分かる範囲の情報も伝えた。どうも、この男が喉に刺さった魚の小骨のように感じている。
「周りの関係者を調べてくれないか?実費は請求してくれればいい」
 1万円札を10枚出した。
「高給だね」
「危ない奴だから気をつけろ」









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饗宴

 タクシーはこの細い路地は入れないので途中で降りる。
 ホワイトドームの中は何時になく騒がしい。ドアに手をやるが開かない。何か騙し討ちに会った雰囲気である。まだ、先程の轟の報告が耳鳴りのようになり続けている。加瀬の裏切りは頷けるが、相談役が社長と会うのはどういう流れになったのか。
「遅かったな」
 隙間が開いて、ケイ君の顔がのぞく。
 カウンターは薄暗いが、ずらりと15人ほどの頭が並んでいる。カウンターの上に若い外国の女が全裸で寝そべっている。目玉さんやでか鼻の馴染の顔はない。カウンターの中にはマント姿の団長がいる。カオルの姿もない。ちらりと団長の視線が周平に向いたように見えた。
「まず、飲んで。値段をつけてもいいんだよ」
 一番端に座らせて、周平に水割りを勧める。
「これは例のお金の謝礼の意味だから」
 サングラスをかけた男が、値踏みをした男を選んで裏のドアに連れて行く。そうすると、カウンターの上にまた新しい女が上がる。
「サングラスの男をよく見て」
 ケイ君が囁く。
 どこかで見た顔だ。
 次に、あのロシアの少女が上がった。彼女も驚いてみている。
 永遠と、0時まで続く。最後は空いた席に、でか鼻らが座っている。大方の客はかたずいたようだ。サングラスの男が札ビラを団長に渡している。
「あの男が、唯一昔の団長を知っている。手術代も立て替えて貰ったと聞いた。思い出せないようだね。ということは団長との縁はなかったということだよ」
「昔あったような」
「ならいい。今日はそのくらいにしておけよ。多少調べているから」
 そろそろ身内の打ち上げになるようである。裏のドアが開いて、目玉さん達が入ってくる。カオルが背中から飛びついてくる。サングラスの男と団長の姿がない。









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仁義

 留守電の主は、ケイ君だった。今晩手が空いたら、ホワイトドームに来いよという伝言だ。
 時計を見ると、9時を回っている。連絡があったのは、8時過ぎだ。家に電話を入れるが、誰も出てくる気配がない。今度の映子の浮気旅行は長いようだ。
 タクシーを走らせて、30分の距離だ。途中で轟から携帯が入る。
「社長派からのお誘いでしたね」
 轟があの場所のどこかにいたようだ。
「国崎さんは読み込み済みだったという訳?」
「まあ、そういうところ」
「この動きは、咎められるのかな?」
「いや、成り行きにってな感じかな」
「あの追突の車見つけたぜ。ラブホテルの送迎者用の車だ。あの賭博場に出入りしているチンピラが使っている。これは俺の手柄じゃない。国崎さんのルートで見つけた。それで、刑事がラブホテルに」
「逮捕した?」
「いや、国崎さん得意の脅しだよ。あまり荒立てるのもよくないようだ」
「今はどこから?」
「2件目のスナック。ここには入れないんで、寒空にベンチでウイスキーをやっている」
「包帯は?」
「無理矢理外した。目立つものなあ。もう一つ報告だ。あんたところの部下の加瀬がとんでもない男を連れて入ったぜ。この報告は例によって、まだ上には上げない。二人だけの秘密だ」
 どうも二人だけの仁義のようだ。
「相談役だ」







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誘い

 マキから今度は反対に呼び出しがあった。
 銀座のクラブの一つだが、少し中心地から離れている。でも顔のささない店としては繁盛しているようである。
「珍しいね。いつものホテルのレストランじゃなくて」
「そんなにセックス好きじゃなくってよ」
 今日はOLらしくない派手な夜の女の格好だ。
「たまには、私のお力にもなってよ」
 半ば強引に間仕切りのある一角に案内する。
 田上専務に、社長の顔が見える。
「鈴木君は彼女の友達なんだってね。めったに話したこともなかったが」
 社長が鷹揚に周平の肩を叩く。
「今度は、君に今の部を任せたいと、おっしゃられている」
 田上専務の顔がいわくありげに歪んでいる。
「マキ君の評価も高い」
「いえ、まだまだひよっこですよ」
「そんなことはないよ。手が早いんだから」
 マキが口をはさむ。
「今度この店を彼女がするそうだ」
 とうとう社長からグラブの資金を引き出したのだろうか。すっかり、ママ気取りだ。
「君の舅は少し現場に出てもらおうと考えている。会長も相談役のポジションがもうすぐ空くからね」
 これはどうやら監査役という駒を失ったことを言っているようである。どうもそんな簡単な成り行きではなさそうだが。どうも、とんでもない危険なところに捨石されたようである。どんな言質も取られないことだ。
 話は終わったようだ。女の子が3人入ってきてソファに座る。マキは当然のように社長のそばに掛ける。この姿は、会長からクラブを買って貰った、映子の実母親のママそっくりである。ポケットの携帯のバイブレターが震える。周平はわざとらしく覗き込んで、
「これから談合に呼ばれました」
と立ち上がった。










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プロフィール

夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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