夢追い旅 小説
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導火線

 舅が朝、五反田の駅で何者かに突き飛ばされ重体の連絡を相談役から受けた。そのままタクシーを拾って病院に向かう。
 病院に着いた頃は応急手術は済んでいて、警察の聴衆も終わった後でベットに横たわっていて意識もあるようだった。
「どうしたんですか?」
「いや、押されたんだ」
「相手は?」
「分からん」
「足が入ってきた電車に跳ねられたようで当分歩けない。だが、おそらく柳沢だと思う」
「警察に?」
「いや。確認したわけでもないので言ってはいない」
「あの日二人でずいぶん話されてたようですが?」
「奴は狂っている。マドンナを隠したのも、自分を追い詰めているのも僕だと思い込んでいる」
 舅の目も周平から見ると異常だ。
「君も気を付けた方がいい。奴は僕が指揮をして君を動かしていると思っている。それとKジャーナルの記者を調べている。すごく怯えている」
「どんな話をしたんですか?」
「話じゃない。マドンナから手を引けとか赤坂から手を引けとか正常じゃない。あの調子なら会長も逃げ腰になっていると思う。いや、脅しているかもな。根っからのチンピラだ」
「監査役の事故死の件、チンピラの毒殺、加瀬の自殺偽装すべて彼が絡んでいます。そもそもお二人が絡んだ藤尾さんの強姦偽装から事件は始まっているのですよ。もともと藤尾さんをはめる絵を描いたのは部長です。柳沢はすでに強姦していたマドンナの写真を餌にひきこんだ。知っていたんですね?」
 舅はしばらく黙ったままで、
「誰に聞いた?」
「マドンナです」












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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

指示

 ミーから携帯が入りNビルの旗手社長の部屋に呼ばれた。
「赤坂の方は?」
 書類を目を通している社長が顔を上げて聞く。ミーは二人分のコーヒーを入れてテーブルに乗せる。
「Sハウスに正式に指値の依頼書を出すことを役員会で決めました。Sハウスには伝わっているかと思いますが?」
「社長からどうすると言ってきたのさ」
 Sハウスには周平が代理で依頼書を届けている。
「金額はどうする?」
「100億から社内の根回しをしていますが、200憶が妥当かと」
「よし、段取りにかかるようにSハウスには伝えよう。だがS銀行が200憶では抹消には応じないだろう?」
 旗手社長は別の書類に印鑑を押しながら俯いて話を続ける。ミーは新しいスーツを出してきて、着せ替える準備をしている。
「M銀行頭取は条件付きで運転資金を出すと言っています」
「会長の退任か」
 スーツのズボンの履き替えをミーが手伝う。
「未公開株の政界ルートだがな、与党と野党を別建てにしてと思うんだが?」
「小林さんから」
とミーがレターを渡す。
「小林君がな、ルートの一部を任せてほしいというのだが、黒崎さんは反対している。お金の件は信用がない」
「私もそう思います」
 ミーが同意する。
「とにかく一度あの代議士に会って彼の意見も聞こう。二人で行っておいてくれ」
と言いながらもうコートを手に立ち上がる。
「その時あの国の土地の件も聞きておくんだ」










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家族

 薄暗くて長い廊下を抜けてカオルの病室に入る。まだ、朝食の最中の患者もいる女性専用の大部屋だ。
「来てくれた!」
 べそをかいたようなカオルの顔がある。
「どう?」
 団長が心配そうに言う。
「狐が来たからもう元気!」
「先生からも言われたけど、しばらくここにいた方がいいわよ」
 首を激しく振る。
「今日はいい話を持ってきたの。駄々をこねないで」
 団長は周平がサインと判を押した婚姻届を広げて預かっている小さな印鑑を出す。
「結婚してくれるんだ!へえ、狐の名前田辺周平というのね?」
「カオルは吉川薫か」
「この印鑑と戸籍謄本が服に縫い付けてあったそうよ」
 団長がカオルを起こしてボールペンを持たせる。
「これで生まれて来た子もちゃんと籍に入れるわ。名前も考えないとね」
「タナベカオルか」
 カオルが何度も繰り返しながら絵文字のような字を書く。
 ひとしきりはしゃいでいたかと思うと、いつの間にかうとうとしている。周平と団長は娘を見舞いに来た夫婦のように先生に挨拶をして区役所に続く路地を歩き続ける。
「あの押入れの金を使ってくれ」
「あの黒革の鞄ね」
「1000万ある。やましい金じゃない」
「いいの?」
「これからはすべて3人、いや4人のものさ」
「結婚するからどこか二人は部屋を借りないとね」
「だめだ。4人で暮らす」
 なんだかこれだけは崩せないと周平は思った。














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小さな幸

 藤尾の地上げ事務所から帰りがけにマキの携帯に留守電を入れた。周平がホワイトドームの前に来た時にさわめきの中からマキの声がした。
「マドンナは?」
「私のマンションの近くに両親といるわよ」
「それならいい。柳沢に気を付けろと言っといてくれ」
 それだけで切った。時計を見ると9時を回っている。ドアを開けると、でか鼻さん達が一列に並んで飲んでいる。団長が黙ってビールの小瓶を出す。
「何か作ろうか?」
「特製の焼そばで、カオルは?」
「今日フランケンに病院に担いで行ってもらったのよ」
 そう言えばいつぞや棺桶を運ぶ大きな男がカウンターで飲んでいる。
「どうした?」
「急にもどしたのよ。お腹の子が心配なので病院に運んだの」
「それで?」
「つわりにしては早すぎるし取りあえず今日泊まって明日精密検査をしてもらう。このまま出産まで預かってもらおうかなと思ってるの周平は?」
「そのほうがいい」
「まだ子供は降ろしたほうがいいと言われているの」
 団長もビールの小瓶を開けて飲む。
「それと入籍もしないと子供の行き所がないわよ」
と言いながら婚姻届を引き出しから出してくる。
「明日遅刻できるかな?周平がカオルにサインさせてね。喜ぶから」
「分かった」

 









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手負いの野獣

 役員会議の中で会長派と社長派が紛糾した。舅が赤坂の裏口座の提出を求めたのである。これに社長が合意をしたが、会長はそんな口座は見たことがないとうそぶいた。柳沢も藤尾から引き渡しを受けたことがないと回答。これについて相談役が調査を進めてS銀行に依頼すると約束した。柳沢は逆に田上専務に組合の裏口座の提出を求め、これについても存在しないと逃げに出た。これについても相談役が調査を約束した。  その二つの難問がそのまま周平の肩にかかってきている。何とも頼りない経営陣だ。だがどちらも周平にはある程度の目途を持っている。  舅の目が虚ろだ。  逆に柳沢の目が燃えている。追い詰められた野獣の目だ。  二人が応接に入って出てこない。ともに仕掛けあったと信じているようだ。その間に藤尾を呼び出して赤坂の地上げ事務所で会うことにした。 「見ましたよ。大胆な記事書きましたな」 相変わらずコップ酒を飲んでいる。 「あの裏口座で確認したいことが?会社名が消えていたのだけど?」 「ああ、あれは使っている地上げ屋ですわ。今はこちらの仕事をしてもろてますがな」 「名義変更は?」 「おそらくそのままやろうな。通帳とカードは渡したが、印鑑はもともとその会社のもやから。でもこれも社員の名前で作った裏口座やさかい」 「記帳内容の依頼を銀行にかけたいのでお願いできますか?」 「いいですよ。銀行は私がついていきますわ。作成の時もそうでしたからな」 「柳沢に注意してください」  ここまで追い詰められたら何をするか分からない。

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プロフィール

夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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