夢追い旅 2017年09月

物語の余白 4-1

 想像していたホワイトドームではないと私は扉をゆっくり押した。最後のノートを周平から渡された日から、25年という長い年月が流れている。
 広いフロアーの片隅に時代物のカウンターが残されている。これが昔のホワイトドームのカウンターだと知れる強烈な臭いがする。一番端に座っているのが頭の禿げあがったがフランケンそのもので、背中が曲がっているがその横は目玉さん。後は若い男女が電線の雀のように並んでいる。
「いらっしゃいませ」
 カウンターの中から松七五三聖子でもない、カオルでもない熟女が声をかけてきてカウンタの一番奥の席の隣のに案内する。黙って小瓶のビールを2本栓を抜いて並べる。
「白髪の紳士だな」
「そちらはますますニヒルなやくざ顔になったな」
 周平は旨そうにビールを飲む。
「どうしてこの時期に出てきた?」
「旗手社長が6か月前に亡くなった。それで用意していた原稿を出版社に回した。題はそちらの副題の『夢追い旅』をそのまま使った」
 と言って2冊に分冊された本をカウンターに並べる。表紙はあの時周平が置いていった3人の並んだスナップ写真をイラストにしている。
 周平は立ち上がると、壁から額に入った写真をテーブルに置く。
「左端に写っているのが松七五三聖子だ。5年前に亡くなった。これで自宅の居間には母とカオルと団長の写真が並んでいる。団長は最後まで松七五三聖子に戻ることはなかった」
 それから壁の本棚から5冊の『アンの青春』の台本を置く。
「今もこの5冊がこの劇場で繰り返し上演されている。団長が亡くなる3年前から俳優を降りて、彼女の代わりに監督をしている」
「舞台前に食事出すよ」
 カウンターの中から先ほどの彼女が定食のプレートを並べる。
「7年前から事実婚をするように団長に言われた。そろそろ籍を入れるつもりだ。彼女がカオルの子守をしてくれていたユキだ。今も舞台に立っている俳優だ」
 ユキ、私の中にも彼らがすでに確かに息づいている。
「今夜は泊まれよ。話したいことがいっぱいある」























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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

物語の余白3

 高瀬川の細い道を下る。私は気持ちが重くなってくると、昔から変わらないひっそりとしたこの音楽喫茶に来る。そうして知らん顔をしているマスターを横目に、半日もビールの小瓶がぬるくなるのも構わず座っている。大学時代そうして3人で思い思いの夢を語っていた。それぞれが勝手に語り、誰もがその世界に足を踏み入れなかった。
 いつもの席に卒業してから5センチは伸びただろう周平がすでに小瓶の2本目を飲んでいる。
「鋭い目になったな」
「お前は白髪が増えた。読んでくれたか?」
「ああ、久しぶりに昔に戻った。松七五三聖子は元気かい?」
「家を出る前に撮った」
 周平はブレザーの内ポケットから1枚の写真を取り出した。
「これが松七五三聖子か?別人だ。昔よりずっと美人になっている」
「俺は昔の彼女の顔を思い出せなくなっている」
 私は持ってきた3人で撮った写真を出そうとして思いとどまった。
「隣にいる子がカオルだな。自分の子ではないと書いていたが?奇妙な家族だな」
「そこに集まってきただから家族だ」
「俺は離婚を承諾することに決めた。同じ血が流れているのに家族ではなくなっている。こんな時に話す話じゃないが、最初に彼女を抱いたのは俺だ」
「知っている。起きていた。長い2時間だったよ。でも俺は母とそうして育ってきた」
「悪趣味だな」
「そうだ。俺の性はひねくれている」
 と言って周平は鞄から最後のノートを取り出した。
「最初に松七五三聖子を抱いて、最後にまた抱いたお前にこの小説を託したい。俺は何度もお前が彼女を抱いているのを一人廊下で聞いていた。やはり彼女はお前を選んだと思ってね」
「それは違うな。彼女はお前の中に別の女が住んでいると言っていた」
「うんそうかもな。お前が小説を書き上げた頃また会いに来る」
 一陣の風のように周平が扉に消えて行った。





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物語の余白2

 長い10日が夢遊病のごとく過ぎた。あの河原町のスナックに1度も飲みに行かず、印刷町工場を後にすると一人ぽっちの部屋に帰ってきて、びっしり万年筆で書き込まれた几帳面な彼らしい文字を追いかける。その間だけ周平の昔の友人で入れた。
 お前は約束していたように大会社のエリートになったじゃないか。なのにどうして女房と別れた。どうしてもありえない偶然に引き寄せられて松七五三聖子、いや団長と出会ってしまったのか。それほど東京と言うのは不思議な街なのか。そういうしがない私は京都の町工場に勤めて、町工場で知り合った節子と恋をして、仲間に祝福されて平凡な結婚生活に足を踏み入れた。そのうちにあれほど小説家になりたいと思っていた夢が色あせてしまい、ノートも開くことがなくなった。
 節子はあまりにも現実的な存在だった。マイホームを手に入れたいと自分も再びパートで印刷工場に舞い戻り、私の私生活はすべて彼女の手の中に入ってしまった。もうどんな夢も見れない。それでしがない経理の私は社長に内緒で経費を月に5万10万とくすねるようになっていた。ばれない分だけ私は自分から地獄に落ちて行った。周平のいた世界とここは別世界だ。
 同じような大学生活を送った人間がそれほど違った人生を歩くのだ。
 毎夜夢の中で松七五三聖子と会った。彼女は昔のままだ。彼女も小説を書く。その縁で3人は親しくなったのだ。初めて彼女を抱いたのも私だ。大学2回生の夏だ。彼女の下宿で酒を飲みながら彼が好きだと言う通天閣の街を描いた小説の話をしていた。実は松七五三聖子も私も密かな愛読者だったのだ。
「なぜ二人は別れたのだろう?」
「それは子供を下したからじゃ?」
と言う聖子に周平は、
「この小説に書かれていない話があると思う」
と言って酔いつぶれて眠ってしまった。
 その横で始めて私は松七五三聖子を抱いたのだ。
 この10日間は恐ろしく長く短い時間だった。



















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物語の余白1

 怪しげな手紙を3日間も炬燵の上に放置したまま、毎夜河原町のスナックに通い詰めて酔いどれている。女房の節子とは去年愛想をつかれて離婚した。いや離婚調停中だ。一人娘の親権と養育費で揉めている。この離婚も出会いがしらの交通事故のようなものだと私は思っている。原因は酔いつぶれているスナックのママだ。この店に通って半年でママとベットを共にするようになった。
 ママと結ばれようとして節子との離婚を決意したが、なんとママには頼りない亭主がいて彼女はその亭主を愛していた。でも時々我慢ならなくなって浮気をする。数あるその中の一人だった。でも未練たらしく夜になったら印刷町工場からそのスナックに足が向いてしまう。
 それで4日目にして初めてその手紙の封を切った。
 田辺周平、そうだ私に勝手にこの5年間ノートを送り続けてきた男だ。1冊目は数ページ目を通したが、2冊目からは学生時代のアルバムと一緒に段ボール箱に投げ込んでいる。俺は大学時代という小説の中にいたのだ。小説の幕は閉まって女房と子供を食わすだけで精一杯の情けない男。
「僕は今松七五三聖子と暮らしている」
 その言葉で小説の世界に引き戻される。松七五三聖子という名を思い出した。周平と彼女の取り合いをしていた。私は慌てて段ボールの中を酔った目で舐めまわす。学生時代のアルバムは1冊きりしかない。それも数枚の写真しか張られていない。あの頃は小説家になる夢ばかり見ていて、過去を残すという気がなかった。ゼミで撮った写真と下宿の屋根の上で撮った写真、この間で足を投げ出している女性が松七五三聖子だ。
 周平も私もその頃はお互いに内緒にしていたことがある。今日は用事だと互いに言い訳がましく言った日は実は松七五三聖子の部屋の布団の中にいた。お互いにだ。互いに彼女の部屋の前の廊下まで来て微かな獣のうめき声を聞いて失望のどん底に落ち込んで長い道を歩いて帰った。
 お前はまた青春の小説の中に戻ってしまったのか。でも松七五三聖子が国外を出る最後の日、彼女は同朋にすべく私を部屋に呼び出した。だが私は抱き終わった後その誘いを断った。
「周平も誘ったのか?」
「誘っていない。彼には私より愛している人がいると思う」
 この話も最後まで打ち明けずに大学を卒業した。手紙の最後に、
「松七五三聖子は顔も記憶も失っている。だが君には二人の結婚を伝えたい。会いに行く」
 と半ば強制的に書かれていた。
 どうしたことか、ダメ人間に成り下がっていた男が10日の猶予を残して会う場所を指定した手紙を書いた。電話では伝わらないそんな気がした。会う前に周平のノートをすべて読んでおくのだ。妙な決意だ。

















 












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手仕舞い

 思い切って周平は7年ぶりに大学の友人にして松七五三聖子の恋のライバルだった彼の電話番号をプッシュしてみた。これは数か月前から考えてきたことだった。団長、いや松七五三聖子と結ばれることを報告できる唯一の人間だ。そしてこのノートの最後の1冊を手渡しする。これであの日の夢の種の住民になりきれるかもしれないと思う。だがその携帯番号はすでに使われなくなっていた。それでやも得ずノートの配送先に手紙を書いておいた。
「珍しく手紙何か書いて」
 今夜は『アンの青春2』の初舞台だ。周平も何とかセリフを覚えて初舞台を踏む。
「いや彼に会おうと思ってね」
「吃驚するんじゃない?」
「いや、あのノートを読んでいたらそうも驚くことはない。団長も一緒に会うかい?」
「いえ、やめとくわ。松七五三聖子は消えてなくなったのだから」
 淡い青春の思い出として彼の中に残るか。そう思いながら周平は松七五三聖子に会うためにその夢の中に飛び込んでいったのは自分なのだと思う。
 ホワイトドームの扉があいてフランケン達が入ってくる。隣地の取り壊しと劇場の建設が始まっていて、フランケン達が日雇いで雇われている事業主は藤尾の会社だ。藤尾は古い文化住宅の柱を残して劇場を建て増しとして登記するようだ。藤尾は最近はバブルで崩れそうな会社の物件を主に扱うようになっている。藤尾が後ろからヘルメットを被って入ってくる。
「まるで現場監督やな」
「現場監督や。ビール抜いてくれよマスター」
 一列に並んで止まり木にとまっている。
「新橋のビルは?」
「今日解体にかかっているわ」
「書類は?」
「すでにこちらの文化の空き部屋には込んだよ。やはりあの場所はいつまでも安全ではなくなっている。何もかも一度すっかり手仕舞いやな」
「なかったことにするのか」














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夢に乗る

 ファイナンス会社の処理も密かに終えた。重なるようにバブルの崩壊の音が増々大きくなっている。旗手社長のベンチャー事件も紙面から消えて、今は銀行の統廃合が一面を賑わせている。そんな中、これも密かに総理が入れ替わった。待っていたように私設秘書が一党員になった元総理の第1秘書に返り咲いた。彼の編集局は今や経済研究所となり、周平が編集局長に収まっている。だがもう周平の出番はなさそうである。
 団長の『アンの青春』はバブルに逆行するように着実に売れている。それとアングラと称する劇団に巻き込まれるように団長の舞台にも火がついている。
 そんな時に藤尾が久しぶりにホワイトドームを訪ねてきた。
「珍しいね?」
「もうマスターになりきったか?」
「マスターなんかじゃないわ。ただの止まり木の鳥」
 これから舞台に行く団長がビールの小瓶を2つ抜く。
「この並びのアパートを地上げしているところが泣きついてきた。それでしばらくこちらの会社で抱いてみようかと思っている。だがホワイトドームを上げるというプランは難問だ。だがいずれこの周辺は都心に近い絶好の土地としてマンションが立ち並ぶと思う」
「だが相当な時間がかかるな」
「それで相談だ。この隣地で劇場をやらないか?その間にすべてを上げてしまう」
「考えてもいい?」
 真顔で団長が答える。
「新橋のビルも赤坂の残地も処分しようと思っている。ここの空いたビルに引っ越ししようかと思っている。あのあたりも今は国税が調査を始めた」
「劇場を作る?」
「一度夢をかなえてみたい」
 カオルも言葉をしゃべれるようになった。団長は伯母ではなくママと呼ばせている。周平はパパだ。だがいずれ仏壇に並んでいるアンとカオルの写真の説明しなければならない時期が来ることを知っている。そのためにも周平は団長の夢に載ってみたいと思う。







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バブル崩壊とともに

 若い新社長と元大阪支社長の不動産会社の社長の反対があったが、予想通りM銀行頭取の仲介で総理の選んだ不動産会社の合併となり上場取り消しの噂も吹き飛ばされてしまった。総理はこれで院政を引く資金ができたらしく禅譲の話が飛び交う。M銀行頭取は内諾通りS銀行をサブバンクにし経営陣の入れ替えを要求、会長、社長ともに退任とし、初の女性社長を誕生させた。
 この頃からバブルの崩壊が始まる。
「ご無沙汰してます」
 元副社長の時には何度か旗手社長同席で話し合ったことがある。
「やはり」
「いや今はしがない文屋です」
 隣に常務の総務部長が掛けている。ここは旗手社長の社長室だ。会長も前社長もこの部屋には入らなかった。
「取り巻きの連中もすべて中心から外しました。まだ元気の残っている飛ばされていた役員や部長を戻しています。今回の不動産部門の消却で本社の負債は0になります。再建計画は当初15年とも言われていましたが、8年で完了します」
「問題のファイナンス会社は?」
 社長はさすがに負債を袋詰めにしている会社のことを忘れていません。
「それも総理が見合い相手をすでに用意しています。こちらは不動産会社のように鮮やかに行いません。あれっという感じで消えてゆきます」
「あなたは表に出ないのですか?」
「裏があってるようです。これからは旗手社長を知らない人たちの時代が来ます。そういう意味で繋ぎとしては難しい時代です。大きな負債とともに大切な風土も失いました。次は何を頼りに会社を立ち上げてゆくかが課題ですね」
「それは分かっているわ。でもまた呼んだ時に来てよね?」
 周平は深く頭を下げて裏扉から消えてゆく。
 新しい時代が来たのだ。









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ホワイトドームの一日

 『アンの青春』が本になると言う。これについては団長、ケイ君、周平の意見が食い違い調整に時間がかかった。団長は自分が表に出れない人間だからと下がる。それでケイ君をダミーで押そうとする。周平は母のことを団長に書きてもらいたいと下がらない。結局2対1で団長の松七五三を取って松七五三カオルとした。
 本の出版に続いて劇場もテントから広い劇場に代わったが、きわどいシーンをたくさんカットされて団長はむくれ気味だ。それにやはり大きな場所になると出場者も他の劇団から借りざる得ないことも増えた。だが依然として団長とヒロシ役の少女が人気を博している。団長は密かに2作目にかかっている。2作目には同棲して結婚まで考えた物書きが出てくる。ケイ君の調べでは彼は文壇の売れっ子になっているようだ。
 周平は最後のノートにを恋敵の友達に送ろうと考えている。それで最近はほとんど新橋のビルにもいかないで、歩き始めたカオルと公園に出かけたり、ホワイトドームの定位置で思い出したようにぽつぽつとノートに書きこんでいる。
「お前はこのノートを段ボールの中に投げ込んではいないだろうな」
といつも同じ言葉をかけてはノートを閉じている。
「寝てしまった?」
 舞台から帰ってきた団長の声で目を覚ます。ホワイトドームのカウンターには劇に出れない常連が一列に並んで飲んでいる。最近とみに色っぽくなったユキがカウンターの中にいる。彼女が時々ワンピースの胸を広げってつんととがってきた乳首を見せる。そして「わたしも舞台に出たい!」という。
「いや、このノートも最後にしようと思ってね」
「それより今度舞台に出ない?」
「2作目ができた?」
「テントで2作目をと話をつけてきたのよ」
「ユキはヒロシの恋人で初出演。カオルは楽屋に連れて行く」
 ユキは飛び上がって喜ぶ。ユキはヒロシ役の少女に嫉妬していたのだ。
「周平はアンの恋人の物書きよ。できたらトーキのような無声映画の小説に言葉をぶつけてみたいのよ」
「そうだなあの小説は風景のような日常を描いていたな。もっと二人の生々しい言葉があったはずだ」
「その果てにアンは二人目の子供を流産した」
彼女の舞台が目の前に見えるようだ。






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明日の道

 ミーの店はもうオープンしている。案内状は来たが1か月が過ぎてしまっている。またミーも新橋のビルにも顔を出さない。そういう周平も最近は新橋から足が遠ざかっている。新橋のビルには赤坂の整理を行う新会社の社長となった藤尾が一人で動かしている。彼に引き継いで下がるべきかと考えた時期もあったが、今はもう少し彼とも話を続けて行こうと考えている。
「ベンチャー会社はこれからどうなるんでしょうかね?」
 ミーの店に走るタクシーの中で藤尾が聞く。
「ぜい肉を落としてスリムになるべき時期だろうね」
 今日ミーの店に行こう決めたのは藤尾である。どうも藤尾はミーの店に何度か足を運んでいるようだ。
 エレベターを上がると外はもう真っ暗だ。慣れた足取りで店の中に入ってゆく。
「やっと来てくれたのね?」
「少し恥ずかしいね」
「別れた恋人に再会した気持ち?」
「あれから旗手社長とは?」
「もう会わないと言われた。それでやっとこの道を始められた。周平とはまだ別れていないよ」
 ちょうど舞台に女性陣が並んで挨拶をしていて、思ったよりたくさんの客がボックスに掛けている。
「店を始めて見てね、これからしたいことが見えてきたの。周平もそうだと思うの。藤尾さんが前に来た時もその話をしたよね。そういう意味で旗手社長は私達に任せてくれたと思うの。大きなことなどできないけど、やってみたいことをこのチームでだめかしら?」
「いいと思うな」
 藤尾が同意している。
「最後の仕上げが残っている。だがその考え方には賛成だ」
「今夜は飲んでショーを見ていてね。今度はビルにうかがうわ」















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最後の一押し

 約束通り『噂の真相』の編集長から旗手社長の不動産会社の見合い相手が知らされてきた。それを持って久しぶりにベンチャー会社の本社の会長室に行く。彼はほん最近まで代表取締役社長だった。だが急に白髪が増えた好々爺の代表権のないお飾りの会長に成り下がってしまった。それだけではなく一番若い取締役を社長に任命したのだ。
「ご無沙汰だね?」
 会長が声をかける。隣のソファに総務部長が難しい顔で腕を組んで座っている。
「新社長は新聞で見ました。あれは旗手社長の意志だったんですか?」
「違う」
 総務部長が首を振る。
「独断で決めた。だから部長は機嫌が悪い。だがもう旗手社長は株主でも総帥でもない。だから私が判断した」
「それはいいのですが、子会社の売買は旗手社長が権限のある統帥時代に決められた。それにすでに総理が動いて話が来ています」
「新社長に相談すべきでは?」
「サラリーマン社長に出番はないと思いますよ。旗手社長は今でも大株主です。それに社長から総理に断わってもらえますか?」
 D社社長の株は旗手社長の裏資金で買い戻されている。
「・・・」
 会長は無言で椅子から立ち上がって部屋を出てゆく。
「どうしたのですか?」
「眠れないとさ」
 総務部長がため息を漏らす。
「念のために旗手社長が言っていた女性を副社長に入れた」
「ああ、やり手の」
「万が一と旗手社長が6か月前に入れていた」 
「M銀行の頭取に表の仲介をお願いしますか?」
「それはいい。新社長では従うしかないだろうね。ファイナンスの方は?」
「これは不動産会社の売買代金で本社の借り入れを消した段階で買い手に渡します」
「となると再建計画は大幅に短縮される。それにこの会社は負債のない優良会社に変身する」
 部長の握手の手を握り返す。やはりもう少しやるしかなさそうだ。















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嫉妬

 京都から通天閣の飛田の店に入ったのは夜の10時を回っていた。おそらく話は終わっているだろうと思っていたがまだ団長と昔の姉さんはにこにこ笑って話している。 「周平やねえ?」 「ご無沙汰してます」  どことなく記憶の片隅に残っている輪郭だ。今は60歳を越えてると思うが、あの頃は地下の舞台で唄っていたアンの先輩だ。 「今は動物園近くの映画館で切符のも切りを。ここの女将さんが探して下さったの」  団長はすでに詳しい話を聞き終わっているようだ。手帳も閉じられている。 「アンが一度35歳頃再婚を考えた時期があったのよ」  団長が言うのに合わせて姉さんが古い写真を取り出しておく。アンと姉さんとちょび髭をはやした男が写っている。この男にも記憶があった。時々アンの部屋に泊まっていくことがあった。 「彼はその頃舞台の脚本を書いていたのよ。見た目より若くてアンより4つ下だったかな。売れない物書きで彼女が小遣いを渡していた。よく二人で映画を見に行ってたわ」   周平の中に男の言葉がよみがえった。 「お前は本当はアンの子なんだろう?俺はどちらでも構わんがな」 と言って暇があれば何かノートに書き続けていた。  小説を書く引き金はこの男かもしれない。自分が読んでいた本をせっせとこの部屋に運んできてくれた。だが、彼が書いた作品はこの時は目にすることがなかった。こういう同棲生活は3年ほど続いただろうか。ある日を境にこの男がぷつりと消えた。 「アンは二人目を妊娠した。男は喜んだがアンは一人で中絶をした。それが縁で別れたと思う」  記憶の片隅に残っている。男の大きな鞄が消えていた。  それから1年ほど経った、ある日卓袱台の上に一冊の月刊誌が拡げられたままになっていた。名前は知らない作家だが有名な賞を採った作品だとあった。これは踊り子としがない物書きの物語だった。そこにはなまめかしく怪しいアンという女と不思議な捨て子が描かれていた。主人公は最後は捨て子に嫉妬してこの街を出てゆく。

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時薬

 『噂の真相』の編集長、実は総理の私設秘書がまた政界に顔が聞くようになったという噂がある。いや総理がまた彼を必要としてきたのだろう。
 それで彼から今日の奇妙な京都祇園でのセッティングとなった。それを話したら団長が一緒に新幹線に乗ると言う。周平が祇園に行っている間に団長は通天閣に行くと言う。夜は飛田のスナックで一時一緒に仕事をしていたという姉さんとの話をケイ君に段取りさせたようだ。
 この祇園の店は旗手社長と何度か使ったことがある。部屋に通されると襖の近くにただ一人のお膳が置かれていている。隣の部屋に編集長と総理が食事をしているようだ。
「今回の大震災は予想外だったね?」
 編集長の声だ。
「会社の再建が見えなくなりました」
「でどうする?」
「ベンチャー事件は今後どういう展開に?」
 きっと総理にはこの事件の絵ができているはずだ。自分の名前が出てこないことも分かったはずだ。だから私設秘書をまた手元に引き戻したのだ。第1秘書ではできることは限られている。
「思い切り長く引っ張ることにする」
「時薬だな」
 重なるように総理の声が聞える。
「そろそろ引退の時期だ。院政を引きたい。そのためには金が欲しい」
「子会社を切り離します。負債もしっかりついていますが、それも使い道があります。仲介をお願いできますか?」
「面白い」
 これも思わず出た総理の声だ。
「Yテレビや銀行筋もこれからバブル崩壊が始まって合併狂乱時代が来る。政界も冬の時代だよ」
 その後からぽつりと、
「ひょっとしたら彼が勝ちを収めるかもな」
と総理のつぶやき。しばらく沈黙が続いてゆっくり襖があく。
「こちらで飲もうや」
 編集長が女将を呼んでお膳を寄せて、舞妓さんが入ってくる。














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二度目の青春

 舞台の夜、ホワイトドームに戻ってきてみんな朝まで酔いつぶれた。そのままカウンターで演技の続きをしている者もいる。参加できなかったユキが眠たくなるのをこらえて見ている。目玉さんもギターを弾きながら自分の世界に入ってしまっている。団長と周平は定位置の片隅でちびちび小瓶のビールを飲んでいる。
「これからどうしようか?」
 これは周平が自分に問いかけている。
「私今回初めて舞台の脚本を書いたけど、まるでアンさんが乗り移ったようにすらすらペンが走った。夢の中にどんどん情景が現れてくるの」
「完全に母の中に入っていたよ」
「私まだ書き足りないの。アンさんがもっと書いて!と叫んでいる。私には記憶がなかったけど、アンさんの記憶が私の記憶に置き代わろうとしている。どんどんアンさんの感情が押し流されてくる」
「君を抱くと言うのは団長と母を抱くことになるのか?」
「アンさんは喜んでいる。これは今までは分からなかったのだけど、今回この舞台を演じてみて一つ大きな事実にぶつかった」
 団長の目が異様になまめかしく光っている。
「アンさんは周平に恋していたと思う。ひろしの自身を銜えるシーンで私はそれを感じた。だから自分を周平から引き離そうとし続けたと思う」
 確かに心のどこかに押し付けていた不確かなぼやけた記憶がある。どうもあのシーンがそれを蘇らせてしまったようだ。あのシーンに至る話を団長にはしたことはない。家を出て大学に通うまで、周平は体中の力が抜けるように眠った日は朝立ちしないほど疲れているのだ。そういう朝はアンはいつの間にか部屋からいなくなっているのだった。
 こんなこともあった。珍しく母が昔勤めていた寿司屋に一人で入ったことがあった。80歳近いお婆さんが、
「いつ戻ってきたんや」
と周平に声をかけてきたのだ。どうも周平は母似ではなく父似だったようだ。そのことを母に話すと急に怒り出して二度と寿司屋に行くなと叫んだ。色々な記憶がよみがえってくる。
「アンは二度目の青春を私の体を借りて迎えるのだわ」
 団長の声が確信に満ちていた。














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記憶の底の風景

 本人死亡でM商事の会長が監査役の殺人教唆で立件され、同時にM商事の社長は会長を解任した。その後任に代表権のない会長に相談役が選ばれた。筋書き通りだ。Yテレビの株の買い戻しも始めた。これについてはM銀行の頭取が一枚かんだ。これについても周平は『噂の真相』に記事を書いているので、原稿料として社長から送金があった。
 夜、新橋のビルから日比谷に出た。『アンの青春』の舞台を見るためだ。テント公演だが1か月も予定よりロングランしている。テントの前に来るとケイ君が舞台に案内してくれる。
 幕が開く。後ろに大きな通天閣の景色が描かれている。暗転。舞台が現れて、目玉さんが懐メロを歌う。彼は昔地下道のトンネルでギターの流しをしていた。目が見えないとは観客は思わないだろう。次に腹の出た小人のデカ鼻が蝶ネクタイで現れる。アンをマイクで紹介する。
 団長の扮するアンが当時の流行唄を歌いながら華麗に踊る。踊りは外人部隊の時に教えてもらったようだ。唄は学生時代から上手かった。あまり顔を見ない若い女が一緒に踊る。幕端にケイ君の顔が見える。何やら合図を送っている。
 突然舞台が真っ暗になる。三色のライトが交差するように舞台の中央に現れた全裸の女を照らす。アンがゆっくり滑るように舞いながら弾き語りを始める。後ろにバイオリンを持った目玉さんが浮き上がる。
「・・・大きな夢にあふれこの街に来たの。でも今は舞台が終われば私は悲しい迷子よ。裸の私、可哀そうな私。もっと可哀そうな息子よ・・・」
 紙幣が紙吹雪のように舞う。暗転。
 いつの間にか舞台裏に変わっている。フランケンが大道具を運んでくる。小人のデカ鼻が集めた紙幣を籠に入れて半裸のアンに渡す。アンはいくらかをパンツに押し込んで後はみんなに配る。腹の出た背広男がアンの背中を撫でている。口説いているのだろう。何度も首を振るアン。そばに少年が。暗転。
 薄暗い部屋に疲れ果てて眠ってしまった少年ひろし。電球の上に通天閣が見える。アンは呻くようにひろしのズボンを下げて彼の命を吸い続ける。
 周平は涙をぬぐうのも忘れて記憶の底に眠っている風景を見つめている。






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ジャンル : 小説・文学

女は逞しい

 朝一番藤尾から連絡があった。9時から5時までということでいよいよマドンナが任意で呼ばれた。周平は『噂の真相』によって原稿をまとめて引き渡した。監査役を殺したチンピラを赤坂の地上げ現場でかくまっていたが、やくざの兄貴を使って柳沢が殺したこと。そこまでを証拠を示しながら書いた。いずれ自分も呼ばれるか漠然とした不安はある。
 藤尾とはマドンナを連れてマキの銀座のクラブで落ち合うことになっている。
「久しぶりすぎるじゃない?」
 ママ自身が玄関に出迎えてくれる。
「稼ぎがないもんでね」
 確かにママが出迎える客のなりではない。ボックス席に案内して女の子は呼ばない。
「周平昔のよしみで不動産の取引手伝ってくれない?」
「えらい羽振りだな」
「それが会長のママの店よ。会長が死んでからは閑古鳥が鳴いてたわ。でも銀座じゃ一等地だからね。この店はマドンナに任せる」
「銀座は弱肉強食だね」
 藤尾が入ってきて着替えたマドンナが顔を見せる。
「すべて話したらすっきりした!M商事の何とかいう係長のことも話したわ」
「藤尾と結婚する?」
「しない。でも同棲はしてる。私はマキママと銀座を制圧するの。柳沢の手帳に全裸の私の写真が挟んであったらしいわ。でもそんなもの脅しにもならないわ」
 M商事の秘書課にいた彼女とは同一人物とは思えない。
「女は逞しいのよ」
 マキが周平を見て笑う。男にはそんな逞しさはない。











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遺言

 ミーから朝一番連絡が入った。本社の社長室の応接室に10時に来るようにという旗手社長の伝言だった。
 久しぶりにスーツにネクタイをつけた。今はすでに旗手社長の秘書室長ではない。『噂の真相』の記者の名刺を持っている。あの新橋のビルの事務所は藤尾の会社の倉庫というふうになっている。周平はすでに存在しない人間になっている。 
「待ったかい?8時から最後の役員会議をしてきた。会長と社長は会議室で引き続いて記者を集めて発表をしている。私が完全に会社から離れると言う説明と、1兆円の負債を10年で返済する声明を公表している。だがそれは大したことではない」
 総務部長がソファに座る。
「これから彼とやってもらう。今回常務として再建会議委員長を兼務する。だが裏は周平に任せる。辞めるのを止める権限はもうない。お願いするだけだ」
「そんな力はありません」
「役員会議ではファイナンス上場ではまとまらなかった。ファイナンスの社長が上場を延期すると反対した。来月には上場は決定している。それで負債を半分にする予定だった。彼はやはり銀行員だったよ。この事件は待って好転することはない。それで部長は不動産を処理してくれ。周平は裏の事業を清算して、一部は表の返済に一部はあしながおじさん資金に回してくれ」
「赤坂も?」
「それはSハウスの社長に伝えてあるのでうまくやってくれ。ツキを失ったような予感がする」
「今回の事件ですか?」
「もあるが、まだまだ予想もしないことが起こるような・・・弱気じゃない」
「そんな」
 部長が心配そうに周平を見る。
「命があるうちに終わりにできるだろうか。どう転がろうと周平はこれを書き物にしてくれ。だが死ぬまでは公表するな。死ぬまでは格好良くな。それとミーを妹として面倒見てやってくれ」
 部長が携帯に頷いて立ち上がる。収監の時間が来たようだ。
























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ジャンル : 小説・文学

夢の中

 夢の中で団長が書いた主人公のアンに会った。まだ周平が小学生の頃のあの写真通りの母いやアンだ。あの頃は時々まだ通天閣の地下の劇場で唄も歌っていた。不思議なことにアンは歳をとらないのに夢を見る周平はどんどん歳をとっていって今は同年代になっている。
 アンは機嫌の良い日は楽屋に入れてくれる。
「子供がいたのか?」
と常連が聞くと、死んだ妹の子を預かっているという。常連が気に入るとアンを飲み屋に連れまわす。そんな日は最後に二人分ほどの寿司箱をぶら下げて帰って来る。そのために周平は晩飯を食べずにお腹を空かせて帰って来る。でも常連客がつかない日が周平は一番待ち焦がれている。
「ついてくるかい?」
 その一言から始まる。楽屋の裏から細い露地を何度も曲がる。まるで夢心地の世界だ。もう10回以上行ったはずだが昼間一人では見つけられない店だ。
「よう、いつもの子供を連れて来たね」
 そういうと少し年輩だが男前のマスターが大皿から綺麗な盛り付けをこしらえてくれる。アンが言うにはこの人はお釜というらしい。ここではアンがマスターとデュエットで歌う。際限なく。時々ソファーで眠ってしまっているとふとアンの声が耳に響く。
「筆おろしは私がしてあげる。大学まで行かせてあげる。でもそこからは一人で生きていくのよ」
 何度も何度も繰り返す。
 いつの間にか目があいて頬が涙で溢れている。周平は2階の布団に潜って台本を読みながら眠ってしまったようだ。暗闇の中で暖かいものが口の中で膨らんでゆく。これは夢の中と同じだ。









テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

母はここで生きている

 もう3日会社に行かず、ホワイトドームのカウンターの片隅で『噂の真相』の記事を書き続けている。書き上げるとケイ君が編集局に届けてくれる。時々カオルを負ぶって公園をぶらぶらする。団長は劇団を引き連れて野外テント回りをしている。その間は客も少ない。常連たちはほとんどセルフサービスで手間がかからない。
「ユキはもう立派なちいママだな」
「ちいママって?」
「団長の代理ということだよ」
「嬉しい!」
 この時間はカオルはすやすや眠っている。棚に台本が載せられている。
「今回もケイ君の台本かい?」
「今回は団長の初台本だって」
 ついつい手を伸ばしてページを繰る。
 『アンの青春』の題名を見てはっとする。伯母いや母の物語だ。いつの間に書き上げたのだろうか。通天閣の下町が鮮やかに描かれている。そう言えば松七五三聖子も一時は物書き仲間で知り合ったのだ。だが実力では恋敵の友人が一つ頭を抜いていた。彼にノートを送り続けているが小説にしてくれているのだろうか。
「練習は見たことがある?」
「9時を過ぎるとここで読み合わせが始まるの。それを見る常連もたくさん来るよ」
「アンは団長だろう。少年ひろしは誰が?」
 少年ひろしは周平のことだ。
「うん。ほんとは私がやりたいと言っていたんだけど、店番とカオルの面倒があるので同じアパートの女の子を紹介したの。頭を男の子刈りされたので泣き出しちゃったけど、本当に似合っていたよ」
 話を聞きながら周平はすっかり少年ひろしの世界に引きずり込まれてしまっている。まるでアンがそこに生きているようだ。台本の中でアンは舞台に立って踊りながら唄を歌っている。
 母はここで生きている。







テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

暴く

 柳沢の事件を掘り下げて、2号、3号と書く。M商事の会長と組んだ柳沢が藤尾をマドンナの強姦という罠で退職に追い込む。会長によって取締役部長に昇進した柳沢によって片腕だった鈴木部長が押し出され、閑職であった創業者一族の相談役に近づき監査役に赤坂の地上げと不明金を指摘される。そこで柳沢の指示で暴力団のチンピラが追突事故と見せかけて監査役を殺した。もちろん記事はすべてイニシャルだが、見るものによってすべて実名が浮かぶ。
 今朝藤尾が任意で呼ばれた。彼とは入念に打ち合わせ済みだ。彼はいつの間にかマドンナとできているようだ。マドンナの任意も覚悟している。くすみかけていた赤坂事件がまた一般紙で旗手社長事件並んで特集記事になる。
 旗手社長は今朝の朝刊で全株をDの会長に譲ったと公表した。これで未公開株事件は旗手社長が背負い会社は志位体制の元、会長の指導で再建に向かうことになる。取引銀行は役員を派遣することもできず融資を続行を決めさせられた。
 夜、藤尾からこのビルの裏の怪しげなスナックに呼び出される。ここは地上げ時代からの馴染だそうで、このビルの露地から入れる。
「まいったね。昼ありの9時間だぜ」
 ボトルの焼酎の水割りを飲んでいる。周平にはビールの小瓶を頼んでくれる。
「調書のサインはした?」
「ああ、だがまた呼ばれるかもな」
「ポイントに整理して話してくれ」
 周平はメモを出してきて記入始める。
「まずマドンナの強姦についての事実確認だ。眠り薬を飲ませれて起きると半裸のマドンナがいた。それを柳沢に取り押さえられたという話をした。それで自己都合で退職する羽目になった。嵌められたと主張したよ。柳沢の手帳にそれらしいことが書かれていたのだろう疑わなかった。でもマドンナを呼ぶだろう」
「赤坂の地上げの不明金のことは?」
「それは次回のような話しぶりだ。ただ『噂の真相』と見比べていた。かなり信憑性があるという感じだ。最後に赤坂の地上げはどこから持ち込まれたかと聞かれたよ」
「そうか」
 周平は次号で赤坂の地上げがS銀行より会長に持ち込まれて始まったと書こうと決めた。















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