夢追い旅 空を飛ぶ翼
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空を飛ぶ翼

「やめなさい!」
 ドアが開いて、黒い影が入ってくる。亀さんは跳ねるようにカウンターから姿を消している。
「カオル、さっさと食器を洗いなさい」
「はい」
 少女もおとなしい。周平はお金を払った観客のはずなのに、いたずらを見つけられたような気持になっている。この影の主には、人を威圧する不思議な力があるようだ。
「団長、今度の仕事は?」
 暗がりの中から、急に団長と呼ばれた女の顔が浮かび出す。髪は真ん中で分けていて長い。美人の部類に入るのだろうか、でも顔に表情がない。仮面をかぶっている感じだ。どうも、周平が眼中にないようだ。
「ケイ君は来てるの?」
「今日は顔を見ていない」
 マントの男が言う。
「明日来るように言って。急ぐから」
と言いながら、初めて周平を見つけたような顔をして、
「お客さん、もう店仕舞いよ」
「詐欺師なんですって」
 カオルが付け足す。
「酔っ払いでしょう?でもないと、こんな店には入らないわ」
「はあ」
「サラリーマンはこんな店とは縁がない方がいい。カオル、財布出して」
「ああ」
「この子はお財布を集める癖があるのよ」
 財布から千円を抜き出すと、
「帰るところは覚えているよね。もう終電も走っていないよ。カオル、向こう側の道路でタクシー捕まえてあげて。あのいつものグリーンのがいい。もう舞い戻ってきちゃだめよ」
 カオルがいつの間ににかドアのところに立っている。機械の擦れるような音がして、ドアの光が消えた。カオルという少女はやはり背が低い。周平の肩の高さにつむじが見える。
「詐欺師のおっちゃん!」
 声をかけてくれるが、足が速くて追いつけない。何度も路地を曲がって、いつも先で手を振る。これはもう一度迷子になったら、二度と家には帰れない、そういう恐怖感が襲ってくる。
「もう少しゆっくり!」
「詐欺師のおっちゃんは本当は空を飛べるんでしょ?」
「いつもはね。あの背広の上着に羽が入っていたんだけど、失なちゃったからね」
「そうかあ」
「今度来たときに、乗せてあげるよ」





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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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