夢追い旅 手負いの野獣

手負いの野獣

 役員会議の中で会長派と社長派が紛糾した。舅が赤坂の裏口座の提出を求めたのである。これに社長が合意をしたが、会長はそんな口座は見たことがないとうそぶいた。柳沢も藤尾から引き渡しを受けたことがないと回答。これについて相談役が調査を進めてS銀行に依頼すると約束した。柳沢は逆に田上専務に組合の裏口座の提出を求め、これについても存在しないと逃げに出た。これについても相談役が調査を約束した。  その二つの難問がそのまま周平の肩にかかってきている。何とも頼りない経営陣だ。だがどちらも周平にはある程度の目途を持っている。  舅の目が虚ろだ。  逆に柳沢の目が燃えている。追い詰められた野獣の目だ。  二人が応接に入って出てこない。ともに仕掛けあったと信じているようだ。その間に藤尾を呼び出して赤坂の地上げ事務所で会うことにした。 「見ましたよ。大胆な記事書きましたな」 相変わらずコップ酒を飲んでいる。 「あの裏口座で確認したいことが?会社名が消えていたのだけど?」 「ああ、あれは使っている地上げ屋ですわ。今はこちらの仕事をしてもろてますがな」 「名義変更は?」 「おそらくそのままやろうな。通帳とカードは渡したが、印鑑はもともとその会社のもやから。でもこれも社員の名前で作った裏口座やさかい」 「記帳内容の依頼を銀行にかけたいのでお願いできますか?」 「いいですよ。銀行は私がついていきますわ。作成の時もそうでしたからな」 「柳沢に注意してください」  ここまで追い詰められたら何をするか分からない。
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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