夢追い旅 早春

早春

 泣きつかれて担当医に頼んで半日だけカオルをホワイトドームにフランケンに担いで帰ってもらう。すっかり物干し台が小さな小部屋に改装されている。そこに蒲団を敷いてカオルを寝かせる。その時カオルを持ち上げて周平はあまりに軽くなった命の重さをひしひし感じた。
「いい部屋だなあ」
 久しぶりに元気で、ポンポンと壁を叩いている。
「子供ができたら戻ってきて、団長も入れて4人で暮らすんだ」
「楽しみ!団長と交互に寝ていいからね」
 カオルにとってセックスは生命の証のようだ。
 下からフランケン達の笑い声が聞こえる。
「子供の名前決めたかい?」
「そんなの言ったってまだ男か女もわからないし、狐が決めてよ」
「そうだな」
「狐も子供ができたら詐欺師から足を洗って、ホワイトドームでマスターしたらいいのに」
 カオルの中では周平はいつまでも狐の詐欺師なのである。そしてカオルは子供のままだ。
「それなら店を少し広げないとな」
「でもあのカウンターはそのままにしておいてね。みんなとまるところがなくなるもん」
「冷蔵庫は少し大きいのにしないとビールが入らないしな」
「カオルお風呂がほしい!だって銭湯に行くと子供に間違えられるし、狐とお風呂の中でセックスがしたい」
 フランケンの声が下からする。
 急にカオルは駄々をこね始める。そろそろ帰る時間だ。
 フランケンに抱えられると短い病院に続く路地を歩く。もうすぐ春は近い。そんなに短い路地の道のりでカオルはもう眠ってしまっている。







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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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