夢追い旅 裏社会

裏社会

 珍しく旗手社長から直接呼出しを受けた。手短に銀座のレジャービルの名前を告げられて、その最上階に来るようにということである。タクシーを降りて、この辺りはマキのクラブのある近くだとようやく分かった。銀座のはずれになる。
 がたがたと音を立てながらエレベータが上がる。どの階もクラブかスナックである。だが、まだ陽が高いので誰も乗ってこない。このビルは旗手社長の趣味ではない。階上に着くとまた相応しくない中国の貿易商社の名前がすりガラスに印刷してある。
「あの」
 ドアから顔を出す。
「もう1階上がって!」
 おばちゃんの怒鳴り声がする。これはビルを間違えたか。だが、暗がりの奥に階段がある。
「階段は歩くものだ」
 旗手社長の声が頭の上でする。
 確かに部屋があるがこれは不法建築のようだ。でも、思ったより立派な古めかしい家具が並んでいる。テーブルの向こうに70歳には見える優男が座っている。その前に旗手社長が息子のように座っている。その横に餅を叩きつけたような小太りの男が窮屈そうに椅子に掛けている。周平が名刺を出そうとすると、旗手社長が目でやめとけと合図する。
「今後は彼がこちらに来ますよ」
「そうか。次はそのまま上がってきなさい」
 周平を一瞥して、
「あの代議士は食わせもんじゃ。よっぽど気を付けることだ」
 どうやら周平がお金を届けているあの代議士のことを言っているようだ。
「そうそう黒崎は悪さはしてないかな?」
 どうも黒崎を呼び捨てにしているようだ。
「よく動いてくれています」
「そうか。だが奴は八方美人だからくれぐれともな」







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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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