夢追い旅 狗

「帰りに覗くからさ」
 轟の連絡が入った。今日は顧問から早めに釈放されて、8時にはホワイトドームに着いた。でも珍しく病院関係者が5人もまとまって止まり木にとまっている。目玉さん達が端の方に窮屈にとまっている。どうも一人が退職するようである。もう70歳くらいに見える常連のレントゲン技師だ。団長が珍しくカウンターの中で相手している。周平はちびりちびりと小瓶のビールを飲んでいる。
「待たせたか!」
 轟が春らしいセーターで入ってきた。10時を少し回っている。
 無言で封筒を差し出す。この厚さでは20万か。ということはあの情報は黒崎のところで100万したようだ。
「黒崎さんのところか?」
「ああ。これから記事のネタを届けるって言って出たよ。ネタ元はこちらなのにさ。でもな、周平を張れと言ってたぞ」
「別ルートだろ?」
「ああ、分かっていりゃいい」
 どうも旗手社長の別ルートは知らないらしい。この世界も複雑だ。周平は上着のポケットから原稿用紙の入った封筒を出して渡す。時間中に書いたものだ。加瀬は自殺じゃないということの記事でほのめかした。
「柳沢はどうしてる?」
「会長宅を2度ほど訪ねているが居留守を使われている」
「会いたくないだろうな」
 会長にとって柳沢の役割は終わっている。厄介払いでしかない。この辺りの頭が回らないようだ。だが、柳沢には新しいM商事でははめるところがない。このところがまた事件を起こす導火線にならなければと思う。
「周平はいつまでこんな中途半端な仕事をしているのかい?」
 轟はいつの間にか団長の入れてくれた湯割りに口をつけて聞く。二人はそういう話をする間柄になっている。
「それこそそちらは?」
「俺は捨てられるまで狗さ」
「産まれる子供のためにもそうもいかんな」
とは言ったもののまだ漠然としている。M商事のけじめをつけるところからだ。








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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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