夢追い旅 時の運

時の運

 思い出しながら銀座のはずれのビルに入った。最上階までエレベーターで上がり後は階段を上る。
 ドアを開けると、歯医者の待合室のような長椅子がある。幸いの待ち人はいない。呼び鈴を鳴らすと、あの餅をぶつけたような中国人が出てくる。
「予約は?」
「いえ」
「じゃ帰って!」
木を鼻で括ったような返事だ。でもそれから不躾に顔を覗きこんで、
「あの時の?」
「はあ」
「先生はもうすぐ戻ってくる。待てば」
「お宅は?」
「居候の許です」
「田辺です」
 一言二言交わしているうちに先生が戻ってきた。
「一緒にお茶を飲もう。社長は元気かね?」
「はい。それで少し相談に上がりました」
 ウーロン茶が出てくる。先生は美味そうに飲む。
「例の代議士なのですが、政界での力はどんなものですか?」
「ずばりというね。昔の貫録のある代議士とはいえんが、リーダーの一人ではある」
 周平が言いかねていると、
「工作金を渡すらしいが、だめとは言わないが博打になるさ」
「博打?」
「政治家は金を貰って何もしないことも当たり前のことだよ。成果が出れば自分だというし、でなくても文句が言えない」
「そんなものなのですね」
「期待しないことだ。後は時の運だね。ただあの社長とは相性がいいかもしれない。税金と思うことだね。さっぱりと諦める」
と言って楽しそうに笑う。








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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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