夢追い旅 ケイ君
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ケイ君

「また珍しいところに呼び出しだな」
 銀座のはずれにあるそれでも老舗で有名だ。周平も接待で何度か入ったことがある。まだ、日の沈まないこの時間に入るのはちょっと興味がわく。
「約束は守るたちでね」
 今日は、Tシャツにジーンズというラフな格好である。
「これがもう一つの仕事着」
「ここはクラブの楽屋裏だね」
「そうです。この時間は、ここは誰も入ってこない。ビール抜くかい?」
 返事も待たずに、ビールの小瓶を抜いて渡す。
「団長と直に話したんだよ、きちっとしたサラリーマンは苦手みたいだから無理だとさ」
「嫌われたわけだ」
「大した売り上げもないスナックなんだけど」
「それで独断だけど、詐欺師の話に乗ったよ」
「詐欺師の話に乗る?」
「カオルが詐欺師だと言い張っている。詐欺師なら、俺たちのメンバーに支障がない」
 思わず笑ってしまった。
「なら詐欺師でお願いするよ」
「それで今日なんだ。あの名刺は忘れたことにするよ。馴染の詐欺師にしたよ。ここでもう一つの商売をする。ちょっとした前衛劇だよ。これでも脚本家さ」
「それこそ詐欺師だな」
「紙一重だね」
「俺はケイ君と呼ばれている。今日から10日間ここで公演、店には団長たちは出ない。店の地図はここにある。もうすぐ団長が来る。舞台の準備さ。二人で話している姿を見てもらう」
「じゃあ、この名刺を渡してくれ」
 周平は、Kジャーナル記者の名刺を出した。
 背中に、熱い視線を感じた。








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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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