夢追い旅 幕が開く
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幕が開く

 約束の時間に、もう一度クラブに戻る。
 入口で名前を言うと、片隅のカウンターに案内してくれる。
 水割りが出てくる。メモ用紙にケイ君とある。舞台がはけたら、一緒に車で店に行くなら、団長の了解はとったと、走り書きがある。
 ざわめきが収まって、舞台にスポットライトが当たり、黒マントの男が映し出される。
「世の中には不思議なことがたくさんあります」
 団長の声である。
 幕が開いて、小人が棺桶のようなものを引きずってくる。
「しばらく世間の煩わしいことを忘れて、私の不思議な世界にご案内します。そう、一つだけお約束してください」
 七色のライトが、不思議な世界にいざなう。
「この場でどのようなことが起こりましょうとも、警察などに通報したり、写真を撮られたりすることのないようにお願いします。すべて、異次元のこと、ショーが済みましたらすっかり忘れて、楽しいお酒を過ごされますように」
 棺桶を引っ張ってきた小人の顔がライトアップされる。あのでか鼻である。もう少し背が高かった気がする。黙々と棺桶の鎖を解いている。重そうな鎖の音質効果がいよいよ怪しげに響く。
「今夜は皆様方のために、一人の少女を買ってまいりました」
 その声を待っていたように、でか鼻の小人が棺桶の蓋を重そうに開ける。
 クラブの観客が、いつの間にか中腰になって棺桶の中を覗いている。何か白いものが少し見え隠れしている。片方の幕から、上半身裸の筋骨隆々とした男が、いかにも重そうな鋸を持って入ってくる。黒マントの団長が、棺桶の中に体を沈める。裸の手がマントにかかる。何とも緩慢な動作だが、時間が止まったように感じる。
「おお!」
という歓声が起こる。
 全裸の少女、いやカオルだ。目を閉じている。団長は軽々と片手で支えると、形の良い乳房を鷲づかみにする。今度は、明るすぎるくらいの照明が少女を映し出す。逆に明るすぎて見えないのだ。人形でないとでもいうように、マントの男は少女に頬ずりをしながら、瞳を開ける。瞳は、一点を見つめている。
 

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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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