夢追い旅 カオルを抱いて空を飛べなかった

カオルを抱いて空を飛べなかった

 朝まだ暗いうちに、ショウちゃんの部屋を出てタクシーに乗った。そこで初めてミーからの留守電を聞いた。夜明け前の4時過ぎに入っている。
「団長さんから携帯に繋がらないのでと・・・。カオルさんが亡くなったって!急いで戻って!」
 カオルが亡くなった!それだけが頭の中を駆け回っている。
 新幹線の中から団長に何度もかけてみるが、呼び出しているだけで出てこない。東京駅からタクシーに飛び乗る。団長には繋がらないが、ケイ君にようやく繋がった。
「どこに行ってたんだよ」
「大阪だ」
「今朝カオルが亡くなった。これから店に運ぶ。店に来い」
 ケイ君も周平も気が動転している。心の中では予想はしていたことだが。
 タクシーを降りてホワイトドームに走り込む。カウンターに目玉さん達が所狭しと並んでいる。ケイ君の声がして階段を駆け上る。カオルと子供にのために作った部屋に蒲団が敷かれていてカオルが寝ている。団長が
「やっと帰ってきたよ。だめな人よね。でも叱らないと約束したし」
とカオルの小さな手を握って話しかけている。
「すまん」
「カオル狐まだかって待ってたよ。生まれた子にカオルって呼びかけて」
 周平は初めて団長の涙を見た。周平にも長らく、おそらく子供の頃に泣いたきり忘れてしまっていた涙が頬を伝う。狐はカオルを抱いて空を飛べなかった。
 周平は思い切りカオルを抱きしめた。なんという軽さだろう。こんなに軽くなってもカオルは子供を産むまで頑張った。そして最後の命を残して行ってくれた。
「幸せだったよそれが最後の言葉」
 そう言うと立ち上がって、
「これからカオルのために宴会してやって、あの子は寂しがり屋だったからどんと賑やかにね」

















スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR