夢追い旅 小さなカオル

小さなカオル

 こんなにホワイトドームに常連がいたかと思うほど、昼過ぎには2階も1階も座る場所もないほどになった。昼過ぎに轟が珍しく喪服でやってきた。それから藤尾も喪服だ。団長が店中にある花瓶を並べてみんなが持ってきた花を挿している。周平は自分の周りを空けてもらって、轟と藤尾とケイ君の場所を作る。
「子供を産むことを選んだからさ。それは仕方がないさ」
 しきりにケイ君が慰めの言葉をかける。それは自分にかける言葉でもあるようだ。彼は時々飲んだ時にカオルの子は自分の子だと言う。それはホワイトドームの仲間はみんな知っていることだ。それにここにいる男性の大半がカオルを抱いている。カオルは小さい頃からセックスで生活の糧を得ていたし、セックスで自分の生きていることを確認していた。周平が抱いてやった数などしれている。でもカオルの温もりが今でも残っている。
「ミーさんよ」
 下から団長の声がした。
 ミーも喪服で上がってきて旗手社長の名前の入った香典を置く。周りの人間が驚いたように席を空ける。
「社長から」
「ありがとう」
 ミーにはカオルの話を時々していた。セックスを愛す仲間同士としてカオルに会いたいと言っていた。
 団長がブランディーを1本持って上がってくる。
「可愛い人ね」
 カオルの顔を見てミーが涙を流しながら言う。団長はカオルの薄くなった髪をそっと束ねてやっている。冗談で鬘を買わないと言っていたことがある。
「少し席を外すので店中の酒を開けてね」
 団長はそう言うと周平を外に連れ出した。それから黙々と病院に向かう細い道を歩く。
 いつの間にか目玉さんが廊下で周平達を迎えてくれる。ガラスの向こうに赤ん坊が寝ている。
「小さなカオルお帰り」
 周平にしか聞こえない声で団長が囁いた。
「今度こそ一緒に空を飛ぼう」
 団長が思いきり手を握ってきた。













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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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