夢追い旅 ツキを失う

ツキを失う

 Nビルに戻ると、ミーがビデオを画面に映し出していて、本社の専務と旗手社長が並んでソファに掛けている。総務部長が電話にかじりついて情報を集めている。周平は軽く頭を下げて折りたたみ椅子を広げる。
「この議員は?」
「野党の議員でかなり曲者です」
 専務が答える。旗手社長の視線が周平に向く。
「小林さんが最後に入れてきた未公開株リストに入っていました。もちろんそれを加えた形であの代議士に提出しています」
「これを見ているとこの議員が株を貰えなくてねじ込んだというストーリーで、小林が秘書室長に金を持たせて謝りにそんな感じですよ」
 専務がビデオを見ながら解説を入れる。この専務が一番の生え抜きだと聞いている。
「やはり株が配られなかったということだな」
 旗手社長が足を組んで天井を見上げる。
「いつか言ってたな。総理が約束通り株をばらまいていない可能性を」
 総務部長が電話を置いて、
「昼前に小林さんが来て秘書室長を連れだしたということです。お金を持ち出す了解はとっていないということです。小林さんのところにはこの議員から何度も電話があったとのことです」
 チャイムが鳴ってミーが上気したSハウスの社長を迎え入れる。周平が自分の椅子を運んでくる。
「さすがに単独でこんな絵をこの議員が描いたとは思えない」
「後ろにYテレビの社長がいるのさ」
「こんな簡単にテレビ中継ができるわけがないな」
 ひよっとすると黒崎と舅がこの裏にいるのではないか。
 旗手社長が立ち上がって部屋の中を歩き回る。考えがまとまらない時にする癖だ。こういう時は誰も口を挟めない。わずか半時間の時間だが、恐ろしく長く感じる。
「ツキを失ったか」
 旗手社長の目は閉じられている。
「専務は明日一番役員会議を開いて報告をしてくれ。それからメインバンクを回ってくれ。続いてY新聞以外を押さえてくれ。Sハウスの社長は長老達をまとめてくれないか?総務部長は今から戻って今日付けで小林と秘書室長を解雇するんだ」
「私は?」
「Nビルを閉める。未公開株関係の書類は消すのだ。その他は藤尾のビルに移せ」








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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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