夢追い旅 迷路を演出する

迷路を演出する

 ケイ君を連れて箱崎の倉庫に3日間通う。ここの管理人は隣接するM商事の研修施設の管理人でもある。会長時代左遷された係長が一度の転勤も昇進もなく間もなく定年を迎える。前の部署で何度か調査でこの倉庫に調べに来たから顔は覚えられている。このような墓場が全国に幾つもある。
「今日で終わるのかな?」
 ケイ君が積み上げられたダンボールを入り口に移動させながらあまりの量に閉口している。
「とは言っても6時にはトラックがやってきて本社に運び込む」
 とくに興味のある資料は持ち込んだ鞄に入れている。とくに興味が引くのは藤尾ノートだ。彼もすでに記憶から消えてしまっているが、赤坂の地上げの裏資金の管理手帳だ。通帳の覚書のようで出入りにコメントをつけている。会長の引き出しが大半だ。これを柳沢も忠実に引き継いでいる。とくに柳沢時代は会長の引き出しが大胆になっている。5億にはなるだろう。無印は柳沢自身の引き出しだろう。1億は下らない。
 昼過ぎに管理人から弁当の差し入れがある。それと暇つぶしにと雑誌と新聞を置いて行ってくれる。
「今朝旗手社長が保釈金を積んで出てくるらしい」
 ケイ君が新聞の一面を見せる。すでに出てきている。本社に行ったか。無意識にミーの携帯を呼び出す。留守電になっている。
「週刊誌では未公開株のもう一つのリストがあると出ているが、そんなもの本当にあるのか?」
「ある。だが外に出せない。でもそれがあるからこそ、この事件をこれ以上大きくしたくないと思っている人達がいる。Yテレビの社長のように暴き出してその人達を引きずりおろしたいと思っているグループの存在する。でも彼らも誰が該当してるかは知り得ていない」
「でどうする?」
「ぎりぎりの事実を出すことによって本丸を隠そうとしている。それには柳沢は格好の題材なのだ。彼は欲にくらんで核心を見落としていた。だから彼を追うことで迷路に迷い込む」
 6時きっかりにトラックが倉庫に乗りつける。本社の総務部がどこから湧いてきたのかあっという間に3日間かかった段ボールを運び出してしまう。
「明日私のマンションに8時に」
 ミーからの久しぶりの連絡だ。












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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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