夢追い旅 遺言

遺言

 ミーから朝一番連絡が入った。本社の社長室の応接室に10時に来るようにという旗手社長の伝言だった。
 久しぶりにスーツにネクタイをつけた。今はすでに旗手社長の秘書室長ではない。『噂の真相』の記者の名刺を持っている。あの新橋のビルの事務所は藤尾の会社の倉庫というふうになっている。周平はすでに存在しない人間になっている。 
「待ったかい?8時から最後の役員会議をしてきた。会長と社長は会議室で引き続いて記者を集めて発表をしている。私が完全に会社から離れると言う説明と、1兆円の負債を10年で返済する声明を公表している。だがそれは大したことではない」
 総務部長がソファに座る。
「これから彼とやってもらう。今回常務として再建会議委員長を兼務する。だが裏は周平に任せる。辞めるのを止める権限はもうない。お願いするだけだ」
「そんな力はありません」
「役員会議ではファイナンス上場ではまとまらなかった。ファイナンスの社長が上場を延期すると反対した。来月には上場は決定している。それで負債を半分にする予定だった。彼はやはり銀行員だったよ。この事件は待って好転することはない。それで部長は不動産を処理してくれ。周平は裏の事業を清算して、一部は表の返済に一部はあしながおじさん資金に回してくれ」
「赤坂も?」
「それはSハウスの社長に伝えてあるのでうまくやってくれ。ツキを失ったような予感がする」
「今回の事件ですか?」
「もあるが、まだまだ予想もしないことが起こるような・・・弱気じゃない」
「そんな」
 部長が心配そうに周平を見る。
「命があるうちに終わりにできるだろうか。どう転がろうと周平はこれを書き物にしてくれ。だが死ぬまでは公表するな。死ぬまでは格好良くな。それとミーを妹として面倒見てやってくれ」
 部長が携帯に頷いて立ち上がる。収監の時間が来たようだ。
























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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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