夢追い旅 最後の一押し

最後の一押し

 約束通り『噂の真相』の編集長から旗手社長の不動産会社の見合い相手が知らされてきた。それを持って久しぶりにベンチャー会社の本社の会長室に行く。彼はほん最近まで代表取締役社長だった。だが急に白髪が増えた好々爺の代表権のないお飾りの会長に成り下がってしまった。それだけではなく一番若い取締役を社長に任命したのだ。
「ご無沙汰だね?」
 会長が声をかける。隣のソファに総務部長が難しい顔で腕を組んで座っている。
「新社長は新聞で見ました。あれは旗手社長の意志だったんですか?」
「違う」
 総務部長が首を振る。
「独断で決めた。だから部長は機嫌が悪い。だがもう旗手社長は株主でも総帥でもない。だから私が判断した」
「それはいいのですが、子会社の売買は旗手社長が権限のある統帥時代に決められた。それにすでに総理が動いて話が来ています」
「新社長に相談すべきでは?」
「サラリーマン社長に出番はないと思いますよ。旗手社長は今でも大株主です。それに社長から総理に断わってもらえますか?」
 D社社長の株は旗手社長の裏資金で買い戻されている。
「・・・」
 会長は無言で椅子から立ち上がって部屋を出てゆく。
「どうしたのですか?」
「眠れないとさ」
 総務部長がため息を漏らす。
「念のために旗手社長が言っていた女性を副社長に入れた」
「ああ、やり手の」
「万が一と旗手社長が6か月前に入れていた」 
「M銀行の頭取に表の仲介をお願いしますか?」
「それはいい。新社長では従うしかないだろうね。ファイナンスの方は?」
「これは不動産会社の売買代金で本社の借り入れを消した段階で買い手に渡します」
「となると再建計画は大幅に短縮される。それにこの会社は負債のない優良会社に変身する」
 部長の握手の手を握り返す。やはりもう少しやるしかなさそうだ。















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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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