夢追い旅 物語の余白 4-1
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物語の余白 4-1

 想像していたホワイトドームではないと私は扉をゆっくり押した。最後のノートを周平から渡された日から、25年という長い年月が流れている。
 広いフロアーの片隅に時代物のカウンターが残されている。これが昔のホワイトドームのカウンターだと知れる強烈な臭いがする。一番端に座っているのが頭の禿げあがったがフランケンそのもので、背中が曲がっているがその横は目玉さん。後は若い男女が電線の雀のように並んでいる。
「いらっしゃいませ」
 カウンターの中から松七五三聖子でもない、カオルでもない熟女が声をかけてきてカウンタの一番奥の席の隣のに案内する。黙って小瓶のビールを2本栓を抜いて並べる。
「白髪の紳士だな」
「そちらはますますニヒルなやくざ顔になったな」
 周平は旨そうにビールを飲む。
「どうしてこの時期に出てきた?」
「旗手社長が6か月前に亡くなった。それで用意していた原稿を出版社に回した。題はそちらの副題の『夢追い旅』をそのまま使った」
 と言って2冊に分冊された本をカウンターに並べる。表紙はあの時周平が置いていった3人の並んだスナップ写真をイラストにしている。
 周平は立ち上がると、壁から額に入った写真をテーブルに置く。
「左端に写っているのが松七五三聖子だ。5年前に亡くなった。これで自宅の居間には母とカオルと団長の写真が並んでいる。団長は最後まで松七五三聖子に戻ることはなかった」
 それから壁の本棚から5冊の『アンの青春』の台本を置く。
「今もこの5冊がこの劇場で繰り返し上演されている。団長が亡くなる3年前から俳優を降りて、彼女の代わりに監督をしている」
「舞台前に食事出すよ」
 カウンターの中から先ほどの彼女が定食のプレートを並べる。
「7年前から事実婚をするように団長に言われた。そろそろ籍を入れるつもりだ。彼女がカオルの子守をしてくれていたユキだ。今も舞台に立っている俳優だ」
 ユキ、私の中にも彼らがすでに確かに息づいている。
「今夜は泊まれよ。話したいことがいっぱいある」























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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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