夢追い旅 物語の余白4-2
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物語の余白4-2

 周平が『アンの青春』の夜の部に案内してくれた。これが最後の作品だと言う。でも物語で言うと一番最初の部分だと説明してくれた。これはわざわざ松七五三聖子こと団長が新世界のアンの勤めていた寿司屋で取材したことで物語の柱ができている。これは周平の小説の中にも出て来ない隠れた部分だ。アンが寿司屋で見習いの流れの若い職人と恋に落ちて、街を出て行って流離い周平を抱いて再び街に戻るまでを台本にしている。
 二人に子供が産まれて、この流れの男、周平の父は子供を抱えたアンと赤ちゃんを残して再び駆け落ちをしてしまう。アンは漁港の町でついには貨物列車に飛び込もうとして線路に立つ。アンの配役の女性の顔が私の夢見たアンとあまりにも生き写しだ。いつの間にか物語の中に引き込まれていく。
「どうぞ」
 先ほどのユキに声をかけられて我に返る。舞台裏に続く扉の中に入る。
「退屈しなかったか?」
 声をかけた周平の横には白髪の初老の男が座っている。
「このビルのオーナーの藤尾さんだ」
 もう私の中でも彼らはしっかり生き続けている。後ろに抱きついているのが主役のアンだ。
「俺の娘のカオルだ。22歳になったのにこの通りだ」
「娘じゃないよ。内妻なんだから。ユキちゃんも認めているから」
「誰の血を引いたのか」
 周平が笑っている。
 やはり長い時が過ぎたのだ。
「今日はホワイトドームは10時からは貸し切りだ。付き合えよ。ところで今どうしているんだ?」
「ああ、あのまま一人暮らしだ。でもお前のノートがきっかけでまた書き始めて、ようやく何冊か本も出せるようになり飯も食いぱぐれていない。通天閣が窓から見える部屋に住んでいる」
「それはいい。話したいことがある。その小説の続編が書けるほどある」


















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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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