夢追い旅 兆候
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兆候

 周平は朝、加瀬に電話を入れた。
「今日は直接、ある人物と会う。特にこれといった問題はないね」
「手伝うことはありませんか?」
「そうだな。これは内々に調べて報告してくれ。田上専務のグループ分けを再調査してくれ。それとああこれはこちらでやる」
 会長秘書のマキの件は周平自身がやろうと思い直した。
「それと分かる範囲で赤坂プロジェクトの資料を集めてくれ」
「それは直接取締役から調査の依頼がありましたよ」
「いつ?」
「そうですね、もう1か月前でしたね」
「報告は?」
「昨日やっと出しましたよ。取締役もあまりご存じではなかったことがたくさんあったようです」
「席を変えて、もう1度掛け直して」
 周平は、格子戸の窓ガラスの外を始めて見た。高い壁に沿って細い路地がついている。その路地はくねくねと長い。若い女の子がその壁の中から現れる。その上にはラブホテルのネオンが見える。
「ここは安全です。今赤坂の資料をもって、応接室に入って鍵をかけました」
「それで?」
「借り入れとしては2000億ほどですが、不明の貸付金が多く確定数字ではないです。3年前から始まっていて、不動産事業部ではなく、開発部扱いになっていますね。開発部と言ったら新らしくできた部で、今の社長が反対をして揉めたやつです」
「そうだったなあ」
 今回の人事異動で取締役に昇進した。
「柳沢部長ですよ。最近は会長の子飼いとしては一躍伸びています。取締役もライバル心を起こされているようです」
 会長は、鈴木部長と柳沢部長を使い分けているということだ。
 若い女の子が、路地の途中に立ち止って格子の中の周平を見ている。ロシア系の顔だ。
「借り入れはS銀行系列が8割を占めていますね」
 社長が反応するわけだ。これではメインが社長の出身M銀行から実態はS銀行に移ってしまっている。






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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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