夢追い旅 黒幕の意思のずれ

黒幕の意思のずれ

 轟からメールが入って、やくざの兄貴の車が朝早く動き出して、タクシーで追跡中だということだ。
 周平はカオルの寝顔を見ながら国崎の事務所に入った。相談があるからすぐに来てくれということであった。
「轟から繋ぎは?」
「はい。先ほど兄貴の車をタクシーで追いかけているところだと連絡がありました」
「ああ、あのジャーナル誌はやくざ屋さんが運営している。記事を持ってきたのはその兄貴という男だ。加瀬の直筆の原稿用紙を持ち込んでいる」
「加瀬はどこかに監禁されていますね」
「裏帳簿の件は?」
「事実です。でも私の課で調査したことはありません。ある程度労働貴族の中では公然の秘密で、どこの派閥が暴いてもあまり有利なものではありません」
「口座は誰が今管理している?」
「書記長が代々引き継いでいると聞いています。でも今でも田上専務が持っているという噂です」  
「田上は今回社長派に鞍替えしたと聞いているが?」
「今までは労働組合を束ねて、社長選をしてきた経緯がありますが、単独では限界があり、社長からの誘いに乗ったところがあります」
「誘い?」
「現在の社長が院政の会長職を目指して、後任の社長に専務を押したと言われています。特に社長はM銀行出身ということで、人脈も資金のポジションもないのです。そういう意味では裏帳簿は社長の財布代わりになっているところがあります」
 この辺りは加瀬ではなく、周平自身が細目に調査してきたところである。
「鈴木取締役と会長はある意味では同じ釜の飯を食べてきた仲じゃないのか?」
「その辺りは黒崎さんが詳しいと思いますが?」
 逆に今の二人の関係が説明つかない周平である。
「そうだな。今までは黒幕の指導が一致していたわけだが、その中で微妙な違いが生まれてきている。会長は直接黒幕の一人と交渉をし始めた。取締役も誰かの意思で動いている。困ったものだ。取締役は君にそんな話をしたことはないかね?」
「あの人は昔から何もしゃべらないですよ」


















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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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