夢追い旅 ばれた

ばれた

 M商事の株価が低迷している。
 社長が各行に説明に回っている。田上専務が緊急入院をした。逆に福岡の鈴木支店長が業績を伸ばしている。彼はすでに離婚届を提出している。正式に人事部にも届けを出している。周平は映子の離婚は今だ内ポケットの中だ。自分がどこに向かうのかが見えなくなっている。
「おめでとうございます」
 相談役に朝声をかけた。銀行筋の強い押しで、専務の更生委員長を引き受けた形になった。この絵を見ると舅の笑い声が聞こえるようだ。
「赤坂のほうは進展は?」
「約3分の1が転売された形になっています。この状態で新たな買い増しはないと思います」
「これでM銀行が単独メインバンクだね」
「問題はこの転売益の処理が見えないですね」
「それはこちらのほうで調べてみるよ」
 最近は相談役の部屋でこうして二人で会話することが多くなった。調べて分かったが、相談役の次男がM商事の福岡支店の課長でいる。これも舅の作戦なのだろう。彼は会長から相談役に乗り換えたのだろう。
「昼ご飯食べない?」
 携帯から団長の声がする。
「そこまで戻れないよ」
「ガラス張りの真下にいるから」
 どうもばれたようだ。
 下に降りると、団長はさすがにマント姿ではなく新聞記者のような恰好をしている。無言でケイ君がよく使う新橋の喫茶店に入る。
「エリート社員なのね?」
 こういう時は相手の話すのに任せるしかない。どこまでケイ君がしゃべっているかだ。
「私の大学を調べてくれたのね。サングラスはやはり同窓だったということね」
「ああ」
「ここまでは感謝してる。でもここからは調べないで」
「それはどうして?」
「私の過去が不吉な気がするの。サングラスも調べないほうがいいと言ってたわ」
「カオルは?」
「しばらく病院で精密検査してもらうわ」
 団長はコーヒーだけを飲むと外に出て行った。
 その後でしょぼくれたケイ君が入ってきた。



















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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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