夢追い旅 落とし穴

落とし穴

 M銀行頭取の圧力と相談役の根回しで空白になっていた監査役を就任させた。これについては社長派が賛成に回り会長がやむ得ず認めた形となった。彼は前の監査役の直属の部下で人事移動で子会社の経理部長に島流しになっていた。当面部屋が手当てされるまで、周平の相談役の部屋の机に座る。
 今会長派も柳沢部長の疑惑を抱え、社長派も田上専務の疑惑を持ち動きづらい状態になっている。ただ優勢に展開をしている相談役もこれといった決め手がない。相変わらず監査役の事故死の警察の調査も進んでいない。追突犯のチンピラの存在も不明だ。そこに加瀬の暴露記事が混乱を生み出している。警察は田上専務をマークし始めている。
 周平は部下に任せていた談合に久しぶりに顔を出す。ここのところ入札については全敗だ。
「珍しいところで会いましたね?」
 銀座のクラブのトイレである。赤ら顔の藤尾である。
「社長ともなれば接待ですか?」
「いや、小林さんの慰労会ですよ。あの人は好きですからね。こちらはコップ酒で十分なんだが」
「帰り軽くいきますか?ちょっと聞きたいこともあるので。きっと私と会うといえば小林さんはOKくれますよ。このビルの1階の赤提灯の店にいますよ」
 周平は部下にもう1軒を任せて外に出た。
 20分して藤尾が店に入ってきた。
「田辺さんの名前は絶大ですな。小林さんは聞くなりOKして次の店に行きました」
「相変わらず梯子が好きなんですね」
 藤尾の好きな熱燗を注ぐ。
「ところで柳沢が中途採用だったことはご存じ?」
「ええ、会長と親しいとも彼自身飲んでよく言ってたね」
「不動産は?」
「あれは素人やった。ただ接待はうまかったわ。とくに相手が女に弱いとうまく料理しとった。博打もそうやったかな」
 今度はコップで熱燗を注文している。
「藤尾さんの思い出したくないマドンナのことですが、私の情報では今は鈴木取締役の女だという噂ですが?」
「私も彼女を犯したとして首になったので、償いをしようとしてマンションをそっと探りましたわ」
「彼女は実家から通っていたのでは?」
「実家は3年も前に出ています。時々飲んだ席で柳沢が五反田の彼女のマンションに泊まった話をしていました」
 周平は落とし穴にはまったような感覚である。
「藤尾さんの事件とほぼ近い時間に鈴木取締役は彼女とできています。それで彼女は秘書課に移籍している。これは間違いなく取締役が動きました」
「いやに詳しいね」
「ある事件の調査で取締役を調べていたんですよ」
 鞄から紙を取り出して、五反田の地図を書いてもらった。

































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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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