夢追い旅 別れの宴

別れの宴

 マキの退職が密やかにあった。おそらく社長が裏帳簿問題で探られないためでもあっただろう。表向きは会長が敬遠したことの噂になっている。だがマキは銀座マダムの実利を取ったと言える。周平に挨拶代りの最後の飲み会の誘いがあった。
「やっぱり来てくれたのね」
 マキらしくなく住んでいる蒲田の馴染の居酒屋に招いた。
 彼女は入社した時からここから通っている。舅の彼女になるまでは合コンにもよく顔を出していて、周平もその飲み友達の一人だった。送ってくると、もう1軒ここで飲んで別れた。
「お疲れさん!」
「うん、ありがとう!」
 ワインで乾杯する。
「引き際がマキらしい。ほっとしたよ」
「新しいマンションに移る?」
「ううん、ずっとここで頑張るわ。私の原点だから。あなただからはっきり言うけど、銀座のクラブはあたしの力で経営してゆくわ。だから社長の女の役もそんなに長くない。これは予感だけどね。社長も長くない気がする。ただのお坊ちゃんなの」
 マキはけらけら笑う。彼女は昔から動物的な感がある。
「銀座の資金は裏帳簿から出てるよ。どうせ調べてるんでしょ」
「マキのことだから資金は迂回してるんだろうな」
 公にする気は周平にはない。
「あなたはどうするの?」
「よく分からなくなっているよ」
「こんな騙しあいみたいな人生つまんないのもね。もう1本付き合ってね。今日は抱いてくれとは言わないから。どうも別人の眼の色になっている周平」












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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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