夢追い旅 別れの宴

別れの宴

 マキの退職が密やかにあった。おそらく社長が裏帳簿問題で探られないためでもあっただろう。表向きは会長が敬遠したことの噂になっている。だがマキは銀座マダムの実利を取ったと言える。周平に挨拶代りの最後の飲み会の誘いがあった。
「やっぱり来てくれたのね」
 マキらしくなく住んでいる蒲田の馴染の居酒屋に招いた。
 彼女は入社した時からここから通っている。舅の彼女になるまでは合コンにもよく顔を出していて、周平もその飲み友達の一人だった。送ってくると、もう1軒ここで飲んで別れた。
「お疲れさん!」
「うん、ありがとう!」
 ワインで乾杯する。
「引き際がマキらしい。ほっとしたよ」
「新しいマンションに移る?」
「ううん、ずっとここで頑張るわ。私の原点だから。あなただからはっきり言うけど、銀座のクラブはあたしの力で経営してゆくわ。だから社長の女の役もそんなに長くない。これは予感だけどね。社長も長くない気がする。ただのお坊ちゃんなの」
 マキはけらけら笑う。彼女は昔から動物的な感がある。
「銀座の資金は裏帳簿から出てるよ。どうせ調べてるんでしょ」
「マキのことだから資金は迂回してるんだろうな」
 公にする気は周平にはない。
「あなたはどうするの?」
「よく分からなくなっているよ」
「こんな騙しあいみたいな人生つまんないのもね。もう1本付き合ってね。今日は抱いてくれとは言わないから。どうも別人の眼の色になっている周平」












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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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