夢追い旅 戸惑い

戸惑い

 子供が産まれる。周平には衝撃的だった。カオルの子供が自分かどうかはどうでもよかった。父親になるということが重たい。自分には母も父も記憶からない。伯母が忘れなさいと言った。でもあなたはそういう子供を作ったらだめよ。珍しく真剣な眼差しで言っていたのを思い出す。
 カオルはしばらく病院で検査を続ける。その間に考える時間はあると団長は言う。
 二人でホワイトドームのカウンターに肘をついて、ビールを飲む。お互いに一言でも言葉を発したら自分を押さえれない重圧を感じて、黙々とビール瓶を眺めては飲む。そんな時救いのように携帯が鳴った。
「轟や。今いいか?」
「ああ」
 団長が席を外そうとしたが、周平は首を振った。
「今柳沢が女のマンションに入った。合鍵を持っている。写真はおさめた」
「やはりな」
「今ダチに車回してもらった。何か取りに戻ったんやないかと思う。加瀬のところに尾行してみる」
「どこに?」
「クリーニング屋の並びの喫茶店にいる」
 そこでぷつっと切れた。
「団長には本当のこと話さないとと思っている」
「どうして私なんかに?」
「君だからだ」
 次の言葉が出そうになって再び携帯が鳴った。
「タクシーでマドンナが戻ってきた」
「早退したのか?」
「どちらにしても連絡を取り合っていたちゅうことや。加瀬を助け出せたら一挙解決や。今から来れるか?すぐ動き出したら、連絡を入れる」
 周平は広告の裏にタクシーと走り書きする。
 団長は無言で外に走る。
 携帯をポケットに入れると、鞄の中の給料袋を抜き出した。コートを着て外に出ると、団長が路地の端でタクシーを止めて手を振っていた。
 今夜は初雪がありそうだ。









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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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