夢追い旅

物語の余白4-4

出会う19
長らく拝読有難うございました。ようやく眠っていた2作目にかかりました。
この作品は未完で終わっていましたが今回は完結させたいと思って書き始めました。それがまたもや長編になりそうです。

『空白』


文字色2作目が終わらないうちに始めて短編(?)の書下ろしを始めました。
http://yumebito86862.blog.fc2.com/  『ぽろんの女』よろしく。


文字色3作目『刺青』を書き始めました。これは青春の苦い思い出です。

文字色初歴史小説『復讐の芽 ***藤林長門守***』を書下ろし始めました。これは夢の中で育ちました。

文字色『夢追い旅』『空白』に繋がる『迷い道』を書き始めました。

文字色歴史小説『復讐の芽(続) ***アユタヤ***』の創作にかかりました。夢はどんどん膨らんでいきます。

今までとは別の世界の小説を書きはじめました。ファンタジー『橙の電車』を是非読んでください。

『橙の電車』を書き始めた時に並行して『ふたり』とこれも今までの世界とは違った私の夢の中に深くにあるものを書きました。文字色





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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

物語の余白4-3

「亡くなる前に旗手社長とは会ったのか?」
「ああ、その時ミーも呼ばれて一緒に新橋の昔のビルの社長室でビールを飲んだよ。少し体調が悪いようだった。ミーとは時々恋人として会っていたようだが、ここ10年抱かれたことがないと言っていた」
「さぞ悔しかっただろうな?」
「いや、清々したと言った。でも楽しい人生だったと」
「彼ならまさに時代の寵児に成れたと思うな。いくらか旗手社長を書いたものを読んだがあそこには彼はいなかった。彼は君とともに生きてきた」
「でもこの事件の核心は墓場まで持っていくと言い切ったよ。結局総理の名前は出なかった。二人の間にどんな取り決めがあったかも知らないままだ」
 昔ながらのカウンターにカオルが入って小瓶のビールを差し替ええる。
 向こう側から話しながら藤尾とミーが私と周平を挟むように座る。ミーは40歳を超えたように思うが、小説でしか会ったことがないが思い描いたように妖艶だ。
「あなたの小説読んだけど、どうして私と周平のセックスシーンを書かないの?一度私と寝てみる?」
「相変わらずだな」
 周平が助け舟を出してくれる。
「それは抱かれるべきだ。女ではない凄い人間セックスができるぜ。これ以上精液が出ないと言う限界まで行くな。男と女。父と娘。そういう垣根が見えなくなるさ」
 藤尾が間の手を入れる。
「私は周平の方がいい」
 カオルが松七五三聖子に乗り移ったように一瞬見えた。すでにカオルは周平の体を知っている。直観に肌が感じ取った。彼らは別世界に生き続けている。こんな人間を小説にまだ書けるだろうか。
「カオルは母カオルの子でもなく、団長の子でもない。もちろん周平の子でもない。あの揺り籠に神が産み落とした」
 老いた目玉さんの朗々とした声が響く。
「そう。私の体が性器なのよ」
 まだ『アンの青春』の舞台が続いているようだ。












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物語の余白4-2

 周平が『アンの青春』の夜の部に案内してくれた。これが最後の作品だと言う。でも物語で言うと一番最初の部分だと説明してくれた。これはわざわざ松七五三聖子こと団長が新世界のアンの勤めていた寿司屋で取材したことで物語の柱ができている。これは周平の小説の中にも出て来ない隠れた部分だ。アンが寿司屋で見習いの流れの若い職人と恋に落ちて、街を出て行って流離い周平を抱いて再び街に戻るまでを台本にしている。
 二人に子供が産まれて、この流れの男、周平の父は子供を抱えたアンと赤ちゃんを残して再び駆け落ちをしてしまう。アンは漁港の町でついには貨物列車に飛び込もうとして線路に立つ。アンの配役の女性の顔が私の夢見たアンとあまりにも生き写しだ。いつの間にか物語の中に引き込まれていく。
「どうぞ」
 先ほどのユキに声をかけられて我に返る。舞台裏に続く扉の中に入る。
「退屈しなかったか?」
 声をかけた周平の横には白髪の初老の男が座っている。
「このビルのオーナーの藤尾さんだ」
 もう私の中でも彼らはしっかり生き続けている。後ろに抱きついているのが主役のアンだ。
「俺の娘のカオルだ。22歳になったのにこの通りだ」
「娘じゃないよ。内妻なんだから。ユキちゃんも認めているから」
「誰の血を引いたのか」
 周平が笑っている。
 やはり長い時が過ぎたのだ。
「今日はホワイトドームは10時からは貸し切りだ。付き合えよ。ところで今どうしているんだ?」
「ああ、あのまま一人暮らしだ。でもお前のノートがきっかけでまた書き始めて、ようやく何冊か本も出せるようになり飯も食いぱぐれていない。通天閣が窓から見える部屋に住んでいる」
「それはいい。話したいことがある。その小説の続編が書けるほどある」


















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物語の余白 4-1

 想像していたホワイトドームではないと私は扉をゆっくり押した。最後のノートを周平から渡された日から、25年という長い年月が流れている。
 広いフロアーの片隅に時代物のカウンターが残されている。これが昔のホワイトドームのカウンターだと知れる強烈な臭いがする。一番端に座っているのが頭の禿げあがったがフランケンそのもので、背中が曲がっているがその横は目玉さん。後は若い男女が電線の雀のように並んでいる。
「いらっしゃいませ」
 カウンターの中から松七五三聖子でもない、カオルでもない熟女が声をかけてきてカウンタの一番奥の席の隣のに案内する。黙って小瓶のビールを2本栓を抜いて並べる。
「白髪の紳士だな」
「そちらはますますニヒルなやくざ顔になったな」
 周平は旨そうにビールを飲む。
「どうしてこの時期に出てきた?」
「旗手社長が6か月前に亡くなった。それで用意していた原稿を出版社に回した。題はそちらの副題の『夢追い旅』をそのまま使った」
 と言って2冊に分冊された本をカウンターに並べる。表紙はあの時周平が置いていった3人の並んだスナップ写真をイラストにしている。
 周平は立ち上がると、壁から額に入った写真をテーブルに置く。
「左端に写っているのが松七五三聖子だ。5年前に亡くなった。これで自宅の居間には母とカオルと団長の写真が並んでいる。団長は最後まで松七五三聖子に戻ることはなかった」
 それから壁の本棚から5冊の『アンの青春』の台本を置く。
「今もこの5冊がこの劇場で繰り返し上演されている。団長が亡くなる3年前から俳優を降りて、彼女の代わりに監督をしている」
「舞台前に食事出すよ」
 カウンターの中から先ほどの彼女が定食のプレートを並べる。
「7年前から事実婚をするように団長に言われた。そろそろ籍を入れるつもりだ。彼女がカオルの子守をしてくれていたユキだ。今も舞台に立っている俳優だ」
 ユキ、私の中にも彼らがすでに確かに息づいている。
「今夜は泊まれよ。話したいことがいっぱいある」























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物語の余白3

 高瀬川の細い道を下る。私は気持ちが重くなってくると、昔から変わらないひっそりとしたこの音楽喫茶に来る。そうして知らん顔をしているマスターを横目に、半日もビールの小瓶がぬるくなるのも構わず座っている。大学時代そうして3人で思い思いの夢を語っていた。それぞれが勝手に語り、誰もがその世界に足を踏み入れなかった。
 いつもの席に卒業してから5センチは伸びただろう周平がすでに小瓶の2本目を飲んでいる。
「鋭い目になったな」
「お前は白髪が増えた。読んでくれたか?」
「ああ、久しぶりに昔に戻った。松七五三聖子は元気かい?」
「家を出る前に撮った」
 周平はブレザーの内ポケットから1枚の写真を取り出した。
「これが松七五三聖子か?別人だ。昔よりずっと美人になっている」
「俺は昔の彼女の顔を思い出せなくなっている」
 私は持ってきた3人で撮った写真を出そうとして思いとどまった。
「隣にいる子がカオルだな。自分の子ではないと書いていたが?奇妙な家族だな」
「そこに集まってきただから家族だ」
「俺は離婚を承諾することに決めた。同じ血が流れているのに家族ではなくなっている。こんな時に話す話じゃないが、最初に彼女を抱いたのは俺だ」
「知っている。起きていた。長い2時間だったよ。でも俺は母とそうして育ってきた」
「悪趣味だな」
「そうだ。俺の性はひねくれている」
 と言って周平は鞄から最後のノートを取り出した。
「最初に松七五三聖子を抱いて、最後にまた抱いたお前にこの小説を託したい。俺は何度もお前が彼女を抱いているのを一人廊下で聞いていた。やはり彼女はお前を選んだと思ってね」
「それは違うな。彼女はお前の中に別の女が住んでいると言っていた」
「うんそうかもな。お前が小説を書き上げた頃また会いに来る」
 一陣の風のように周平が扉に消えて行った。





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プロフィール

夢人

Author:夢人
これは30年前から書き始められた小説です。
日記風に手書きされた原稿にもう一度読み返して書き加えたものもあります。この小説は本来活字にはしないことにしていましたが、某社長がなくなれた記念碑で発表を決意しました。

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